夏の孤島で雪が降り、首なし死体が発見される。
孤島に閉じ込められた雑誌記者の烏有は、連れの桐璃を守るため二十年前に死んだという「和音」について調べ始めるが……
幻想小説として読めばかなり面白い話ではあった。
装飾的だが読みやすい文章で謎の美少女「和音」とその信奉者たち、烏有の半生、桐璃が時折みせる謎めいた行動がじっくりと語られていく。中盤でキュビスムが「和音」の鍵であることが示唆され、そして映画「春と秋の奏鳴曲」から展開は一気に加速し、思いもよらぬところへ着地する。
烏有の半生そっくりな映画。ふたりの桐璃。「和音」――思えば「複数の音の合成音」という名前もしっかりその正体を示していたのだ――という神を造りあげようとし、為し得なかったものたち。どれも好みの展開だ。ただしまあ、これを「本格ミステリ」として読んでいたら本を壁に投げつけていたかもしれない。