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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「きつねのルナール」レオポルド・ショヴォー編(山脇百合子)


中世フランスで複数の作家によって書かれた「狐物語」から二十二編を抜粋したもの。
性悪狐のルナールが狼や山猫、人間その他と騙し騙されたり酷い目にあったりあわせたりする。

登場キャラがルナールを始め基本利己的なので、酷い目にあっても心が痛まない。とはいえプリモはさすがに可哀想だった。

「きりの国の王女」イェジー・フィツォスキ(内田莉莎子)




ジプシーに伝わる昔話の短編集。



「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティー(山本やよい)




オリエント急行で男がひとり殺された。
国籍も職業もバラバラな十人以上の乗客のうち、犯人は果たして誰なのか。


「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(西村醇子)




帽子屋のうら若き娘ソフィーは、荒れ地の魔女に呪われて老婆の姿になってしまう。あてもなく彷徨い、動く城に潜り込んだソフィーは、火の悪魔カルシファーと見習い魔法使いマイケル、そして魔法使いハウルと出会い……。



「剣の名誉」エレン・カシュナー(井辻朱美)




「剣の輪舞」から18年後の物語。アレクの姪キャザリンの成長譚。

アレクはますます変人っぷりに磨きがかかり、狂公爵として悪名を轟かせている。しかもリチャードがそばにいないようだ。いったいふたりに何が……と前作の読者はやきもきさせられる。
第二部でアレクとリチャードが邂逅した時、アレクの台詞が「剣の輪舞」ラストと同じだった。アレクはああやってさりげなさを装いつつ、実はリチャードに受け入れられるかどうか内心不安なのかもしれない。
キャザリン視点ということもあり、リチャードが人間的に完成されているように見える。田舎で穏やかに暮らしている剣の達人となれば誰が見てもそうなのかもしれないが。アレクの変人っぷりが際立つせいで、端から見れば公爵の片想い状態だ。とはいえ前作でも落ち着いた物腰のリチャードが内面はアレクにぞっこんだったのだから、リチャードの内心が描写されればアレクを失うことへの不安が渦巻いていた可能性はある。

さて、主人公はうら若い娘のキャザリンなのだが、その成長っぷりはなかなか痛快だ。
女性は父あるいは夫の所有物であり、彼らに従うことが美徳で、男装、ましては剣術などとんでもないとされる価値観の社会。最初は嫌々ながらも、男装し剣の修行や人前での決闘を経て、だんだん自我を確立していく彼女は魅力的だった。





「剣の輪舞<増補版>」エレン・カシュナー(井辻朱美)




中世ヨーロッパ風の世界。貴族達が優雅に支配する<丘>と、庶民がたくましく生きるリヴァーサイドの地域から構成される市で、凄腕の剣客リチャード・セント・ヴァイヤーと謎めいた学生アレクがふたりで暮らしていく。
本編である「剣の輪舞」と三つの短編を収録。

「剣の輪舞」
本編。竜法務官フェリスがリチャードに上司の殺害を依頼する。フェリス、若い貴族のマイケル、彼に振られて逆恨みするホーン卿、そして彼らを手玉に取り政治を操るトレモンテーヌ公爵夫人。リチャードは貴族達の権謀術数に巻き込まれていく。アレクは妙に貴族のことに詳しいのだが…
とにかく文章に比喩が多く、耽美な雰囲気がこれでもかと振り撒かれている。その分わかりにくくもあるが、主要キャラの魅力は伝わってくるので構わないのだろう。わがまま放題だがどこか人を惹き付けるアレク、ストイックだがアレクには激甘なリチャードのカップルが良い。剣に目覚めたマイケルとアップルソープの師弟関係も魅力的だし、誰よりも上手を取る公爵夫人もいい味出している。

「死神という名前ではなかった剣客」
アレクとリチャードの元に望まない婚礼から逃げ出した娘が訪れる。ちょっと強引な話の運びでアレクが妹について語る。

「赤いマント」
上等な赤いマントの男がリチャードと決闘する。ホラー仕立て。

「公爵の死」
アレクの晩年。本編の後にいろいろありまくったことが示唆されているが、本当に断片的な情報しかないので話に乗りきれなかった。たぶんこれまでの道程を物語として読んだ後なら感涙にむせたかもしれない。

「二人がここにいる不思議」レイ・ブラッドベリ(伊藤典夫)



短編集。

「生涯に一度の夜」
旅の途中、春の自然の中で一夜を過ごす物語。描写が素敵。

「トインビー・コンベクター」
百年前にタイムトラベルで未来を見てきた老人が、百年後に真相を明かす。優しく希望のある物語。

「トラップドア」
十年以上住んでいた古い家に、屋根裏へ続く揚げ戸があることに突然気付く。怖い話。

「オリエント急行、北へ」
列車旅の途中で出会った老婦人と幽霊。人々が神秘的なものを信じなければ消えてしまう幽霊を支えようと、老婦人は奮闘する。最後にふたりで旅立つのが好き。

「十月の西」
魂だけになった四人の男が祖父の頭に住み着くドタバタ騒動。妻の若い頃の思い出がぎっしりと詰まっている場面がいい。

「最後のサーカス」
サーカスの興奮と終わったあとの寂寥感。夏休みの最後の一日みたいな雰囲気。

「ローレル・アンド・ハーディ恋愛騒動」
ひとときの恋の話。ほろ苦い。

「二人がここにいる不思議」
二十年前に死んだ両親とレストランで食事をする話。歳を重ねるとこういうのがじんわり胸にくる。

「さよなら、ラファイエット」
戦後のPTSDに毎夜悩まされる元戦闘機乗りの老人。「戦争ってのは死ぬことじゃなくて、思い出すことだ」という台詞が重い。

「バンシー」
脚本家と人をからかうのが好きな演出家と女幽霊。寒々しい雰囲気のホラー。

「プロミセズ、プロミセズ」
不倫する人間ってどうしてこうも自分に酔ってるんだろうか。

「恋心」
地球から来た女性に恋した火星の男。ひたすら美しい描写が続き、恋とは幻想なのだと言われているようだ。

「ご領主に乾杯、別れに乾杯!」
領主の葬式。遺言により彼のワイン・コレクションがすべて棺に流し込まれようとするが……。
明るくちょっと笑える話。

「ときは六月、ある真夜中」
夜中に女性を待ち伏せする男と、子供の頃のかくれんぼ。抽象的すぎてよくわからないが、連続殺人者がとうとう捕まる話、でいいのだろうか。描写はかなり詩的。

「ゆるしの夜」
クリスマス・イブの告解。些細でもどこか心に引っかかって後悔していることは、誰しもあると思う。謝罪をし、相手のゆるしが無ければそれはずっと残ってしまうもの。それから解き放たれるには……
短いがじんわりと温かい話だった。

「号令に合わせて」
プールで息子にスパルタ教育を施す父親と、その顛末。
自業自得というか因果応報というか。成長した息子の傷ついたまなざしが父親の爪痕なのかそうでないのか、はたまた視点人物の思い込みか分からないのが余韻を深めている。

「かすかな棘」
列車で出会った未来の自分に、妻を殺してしまったことを告げられる男。
過去改変はやろうとしてもむしろ自分の行動がキーになってしまうという、まあよくある話。

「気長な分割」
離婚することになり、蔵書をああだこうだと分割する夫婦。
オチを読むとタイトルが皮肉気に見えてくる。

「コンスタンスとご一緒に」
男のもとに招待状が届く。「コンスタンスとご一緒に」と書かれていたため妻に浮気を疑われるが心当たりがない。ところがコンスタンスと名乗る美女が現れ……
結局なにが起こったのかわからず、読者と主人公が呆然と佇む話……なのかな?

「ジュニア」
軽く馬鹿馬鹿しい下ネタ。登場人物たちは楽しそうだし、著者もノリノリで書いたんじゃないかな。知らないけど。

「墓石」
夫婦が引っ越してきた部屋にはなぜか墓石があった。石工の忘れ物だというが、妻は幽霊がいると怯えだし……
いないと思ったら実は、というラスト。

「階段をのぼって」
空き家となった実家に帰り、子供時代におびえていた「階段の上になにかいる」という恐怖を思い出す男。最後はゾクッとする文章で好き。

「ストーンスティル大佐の純自家製本格エジプト・ミイラ」
田舎町に退屈していた老大佐と少年がミイラをでっち上げて町中を騒動に陥れる。
少年時代のひと夏の思い出、みたいな話。作中では秋だけど。

「ストーリー・ガール」L・M・モンゴメリ(木村由利子)




プリンス・エドワード島で過ごす子供たちの物語。
とにかく描写が美しい。単語のひとつひとつが魅力的で、実際は見たことのない植物などを想像してうっとりさせられる。小さい頃に外国の名作を読み、知らない世界にわくわくしていた自分の読書の原点を思い出した。

「バッチェル牧師の世にも奇妙な教区録」E・G・スウェイン(遠山直樹)



バッチェル牧師から聞き書きしたという体裁の英国怪談集。それなりに地味なところが英国っぽくもある。うっかり発した言葉で尖ったアーチの下がくぐれず、教会に閉じ込められるはめになった「御堂おばけ」の話が好き。

「カーミラ」J・S・レ・ファニュ(遠山直樹)



手記の形で綴られる幻想譚。オーストリアの古城で父や使用人と暮らしていた少女ローラのもとに、絶世の美女カーミラが現れる。寂しい土地柄で友人も少なく寂しさを感じていたローラは、カーミラが時折見せる妙な様子にわずかな恐怖と嫌悪感を感じつつも惹かれていき……



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管理者:dusk

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