忍者ブログ
Home > 作家別(さ行)

写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ドローセルマイアーの人形劇場」斉藤洋


数学教師のエルンストはドローセルマイアーと名乗る人形遣いに出会う。
彼の人形劇に魅せられたエルンストは職を辞し、彼の弟子となる。ドローセルマイアーがまるで生きてるように操る人形の中に、ゼルペンティーナという猫耳少女の人形があり……

淡々としながら「壁の向こう側」へいつの間にか連れて行かれる雰囲気が好き。

「流れよわが涙、と孔明は言った」三方行成



シュール感たっぷりのSF短編集。

「流れよわが涙、と孔明は言った」
故事「泣いて馬謖を斬る」を元にした話。
どうあがいても何故か斬れない馬謖を斬ろうと孔明が奮闘する。様々な方法を試すが馬謖は斬れない。斬れないどころか土に埋めた馬謖がつぎつぎ生えてくる始末。どんどんカオスになる文章に笑い、ちょっといい話風のオチに納得。

「折り紙食堂」
折り紙を出す食堂で展開されるホラー風味三編。珍しい二人称小説なのがまた不気味さを醸し出すのに一役買っている。

「走れメデス」
アルキメデスの逸話と小説「走れメロス」を融合させたらこんなになったよ、という話。
アルキメデスは激怒するし、セリヌンティウスの頭にはノミが刺さっているしで、なんかもう滅茶苦茶である。その滅茶苦茶さ加減が面白かった。

「闇」
闇の中に閉じ込められ、光の外に出られない世界。そこでは人が死んだら電柱になり、闇を照らす光源が増える。
重苦しく救いのない話。

「竜とダイヤモンド」
泥棒の鹿人とドラゴンカーセックスの話。設定は突飛ながら、この本の中では一番まっとうなストーリーである。
みょんみー、と鳴く竜はかわいいし、ダイヤを巡る陰謀や竜との別れ、そして意表を突くどんでん返しとハッピーエンドが楽しかった。


「ワーキング・ホリデー」坂木司



売れないホスト・大和の前に、息子と名乗る小学生・進が現れる。
夜の世界に向いていない大和を案じたオーナーの采配により、大和は宅配会社に転職。期間限定の父子生活を開始するが……

熱血バカな大和が、彼なりに真摯に進と向き合う姿が微笑ましい。親になろうとしつつも、まだまだ子供っぽさが抜けない感じが上手く描かれている。
父親としては若葉マークだが、ゆくゆくは取れる日もくるのだろうか。

一方の進は料理上手で家事の得意なしっかり者。そうなったのは母を支えようという健気な思いが背景にあるのだろう。
そんな彼が、帰りたくないと年相応に駄々をこねるシーンは胸に来た。

「切れない糸」坂木司




父親の急死により、実家のクリーニング屋を継ぐことになった和也。預かった衣類にまつわる謎を、喫茶店で働く友人・沢田が解き明かす連作短編集。

若者らしく商店街のつながりを鬱陶しがっていた和也が、失敗を重ねつつ成長していく姿が微笑ましい。
著者のひきこもり探偵シリーズと似た雰囲気だが、あれよりは重たさと湿っぽさが軽減され、明るい人情譚になっている。

「ペットショップ夢幻楼の事件帳 思い出はいつもとなりに」鈴木麻純



街の片隅にある不思議なペットショップ。なにかしら心に欠けたものを持つ客が訪れると、ペットをひとつ売ってくれる。そのペットは実は、忘れてしまった記憶が形を取ったもので……という設定の連作短編。

こういう作品は店主と店の幻想的な雰囲気が魅力のひとつなのだけど、本作ではあまりそんな雰囲気が漂ってこなかった。おそらく、主要な視点人物に店主の弟や旧友がいて、彼らとのやりとりでどうにも地に足のついた感じが前に出てきてしまってるせいかと思う。
トカゲの月光さんはいいキャラしてて好き。

「黒のコスモス少女団 薄紅雪花紋様」朱川湊人



大正初期、槇島と雪華の周りで展開されるいくつかの事件。
前作とは違い、怪異そのものより人々の営みを中心にしている。


「鬼蜘蛛の讃美歌」
婦女子が何者かに縛られ金品を盗られる事件が起こる。
鬼蜘蛛の動機はなんとなくわかるが、夢二の存在がうまく絡んでおらず、話が空中分解してしまっている印象。

「汝、深淵をのぞくとき」
井戸をのぞいて気が触れてしまった娘の噂を聞く。
表題通り、ニーチェの言葉を主題としている。真相は物悲しい。

「黒のコスモス少女団」
不良少女集団に、雪華が自分の幼なじみの陽之助ではないか確認しろと脅される槇島。
社会の底で身を寄せ合って生きる少女たちの哀しさが語られる。

「幽鬼喰らい」
槇島の元許嫁が病で寝込む。雨の夜に幽霊が部屋をのぞくと言うのだが……
解決策が人の底力を信じるもので好き。

「銀座狼々」
銀座に狼が出たという。
やっと本物の怪異がメインで登場した。

「白い薔薇と飛行船」
台風災害で父親の会社が傾き、槇島は実家に戻る。その後惣多が病を患う。
友が修羅の道を歩もうとした時、止めるのが友情か見送るのが友情か。


「動物園の鳥」坂木司






ひきこもり探偵シリーズ完結編。

鳥井と周囲の人間との交流が徐々に広がり、深まるにつれ、巣立ちの後押しをするか悩み始める坂木。
そんな中、野良猫虐待事件の起こる動物園でいじめの元凶と遭遇し――

文章から妙な甘ったるさが取れて、前作より読みやすくなった感じがした。
料理の描写もより美味しそうになっているのではないだろうか。



「仔羊の巣」坂木司




ひきこもり探偵2作目。
正直前作よりも文章が甘ったるくなった気がしてちょっと食傷気味だ。]

前作から坂木がどうにも外資系保険営業に見えなかったのだが、今作で会社が出てきてさらに違和感が強くなった。
まあ、もしかしたら世の中にはこういう会社もあるのかもしれない。

今作に含まれている短編は、人間関係のもつれというか、一方通行の――いろいろな意味での片想いがメイン。
なので全体的に切ない雰囲気がある。
坂木と鳥井の関係も周囲が理解し、見守体制ができているようだ。

謎が解き明かされ、誰かの心の傷が開示される時、場に居る栄三郎の存在が大きい。
さすが年の功、といったところか。
坂木や鳥井だけではこうも丸くは納まらないだろうが、栄三郎の重みで程よく話が纏まっている。





「青空の卵」坂木司





ひきこもり探偵と涙もろい語り手の、日常系ミステリ短編集。
料理や名産品の描写にも力が入っている。

視覚障碍者を尾行するストーカーや、歌舞伎役者に贈られてきた謎のプレゼントなどのミステリが、坂木と鳥井の人間関係を軸にして語られていく。

ミステリは人間関係を主眼に置いていて、人間の奥底に潜むどろどろしたものも多少描いているが、表現の仕方が小奇麗に感じる。
がっつりえぐいのが好きな人には物足りないだろう。

坂木と鳥井の関係は素敵な友情にも見えるが、かなりいびつだ。
しかも、坂木はその歪みに自覚的でありながら、断ち切ることもできない。
甘く優しいオブラートに包んでいるが、それが逆にいびつさを際立てるようだ。
こういう共依存めいた歪んだ関係性がわりと好きなので、楽しく読んだ。

ところで文庫版あとがきはシリーズ次作品のネタバレがひどすぎてどうかと思う。
もちろん好きな台詞や文章を引用するのが悪いとは言わないが、正直これは興ざめだ。
小説の文章というのは、全体の流れを理解しているからこそ、輝いて見えるものなのに。




「虹の天象儀」瀬名英明




プラネタリウムとタイムスリップの話。

機械やギミックの説明はともすると退屈になりがちだが、この作品で語られるプラネタリウム投影機の説明は面白く読めた。
いつの夜空でも、どこの夜空でも映すことができるプラネタリウム投影機には、どれだけの人の思いがつまっているのだろうか。
月光の虹――ムーンボウの描写が鮮烈なイメージとして残る。
        
  • 1
  • 2

Ad

インフォメーション

管理者:dusk

PR

PR