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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「永遠の森 博物館惑星」菅浩江




地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館を舞台に、データベースと直接接続した学芸員が「美しさ」を追求する連作短編集。
「享ける形の手」、「永遠の森」、「嘘つきな人魚」、「きらきら星」が好き。

「鏡の偽乙女 薄紅雪花紋様」朱川湊人





大正初期、謎めいた男穂村江雪華と出会った槇島。彼らの周りで起こる不可思議な事件を描いた連作短編集。



「墓場の傘」
絵描きになろうと家を出奔した槇島は雪華と出会う。
ひょうひょうとした食えない男だと思ったが、墓場の亡者を供養する姿には彼なりの情を感じる。

「鏡の偽乙女」
雪華のいる下宿屋に引っ越した槇島。
部屋にいる幽霊を成仏させるため、幽霊の本当の姿を鏡に描く「鏡供養」をすることに。
女の心を持つ男の本質――その答えをしみじみと味わう。
理想とは程遠くても、自らのありのままの姿を受け入れる。
決して幸せとは言い難いが、それこそが人の在り方なのだろう。

「畸談みれいじゃ」
知り合いの少女の父が行方不明に。
必死に家族を守ろうとする父親。最後に娘の願いをかなえようとする姿に胸を打たれる。
そして、盲人の瞼の裏にある夕焼け…その赤さ、鮮烈さのイメージが頭から離れない。

「壺中の稲妻」
槇島の親戚が、謎の美青年の虜になる。
誰かを想う、という形は人それぞれ。
惣多の恋の形は意外というか、絵描きらしいというか。

「夜の夢こそまこと」
稀代の女性奇術師の偽者を演じる月子の物語。
彼女の一世一代の芸、それをやり遂げて滅んでいく姿は本当に美しい。
はかなく見えようとも、月子は自らの執念に殉じ、やり遂げたのだ。



「竜が飛ばない日曜日」咲田哲弘





気が付いたら、世界が変化してしまっていた。
竜が支配し、その餌となることが人の無上の喜びとされる世界を抜け出そうと試みる貴士と瑞海。
さらに瑞海は、自身が同じ日を二回繰り返してることに気付く――

理不尽な世界で死にゆく間際、ひたすら友人を想う願いの強さは、どれほどのものだろうか。
竜裕の、嶌田の、そして千伽の最後の願いが、重く迫ってくる。

構成上少々読みにくい部分(<第一>なのか<第二>なのか分かりにくい)もあったが、優秀賞を受賞したのも納得の作品。




「この空のまもり」芝村裕吏





主人公がちょっと有能すぎるというか…いわゆる主人公補正が強すぎるように感じた。
おかげで、主人公の悩みや成長が薄っぺらく見えてしまう。
もう少し主人公の能力を抑えて、水面下であがきつつもネットでは優雅にふるまう…みたいな描写だったら、終盤の展開にカタルシスを感じられたかも。

「地獄番 鬼蜘蛛日誌」斎樹真琴





人の業や情念をもの凄い筆力で描いた作品。

怒りや憎しみ、嫉妬など、生きている限り負の感情はわき起こる。
生きている間は理性で押さえていたその感情が、死んだことによって解放されると鬼になってしまうのだろう。
人に罰を与えるのは、かつて人であったもの、という設定も非常に業が深く感じる。

この作品世界では、極楽に行ける人はほとんどいないのではないだろうか。
心から誰も憎まず、誰にも憎まれず生きるのは非常に難しい。
亡者は責め苦を受け続け、やがて解放されるが、鬼となったものが救われるにはもっと複雑な手間がいる、というのが面白い。

鬼蜘蛛の地獄での生活と、生前の地獄のような人生と対比して、「空の青さ」で表される本当の救い――解脱がすごくすがすがしい。

人の魂を救うというのは、それはそれはもの凄く大変なのだなあ、という読後感だった。


        
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管理者:dusk

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