

大正初期、謎めいた男穂村江雪華と出会った槇島。彼らの周りで起こる不可思議な事件を描いた連作短編集。
「墓場の傘」
絵描きになろうと家を出奔した槇島は雪華と出会う。
ひょうひょうとした食えない男だと思ったが、墓場の亡者を供養する姿には彼なりの情を感じる。
「鏡の偽乙女」
雪華のいる下宿屋に引っ越した槇島。
部屋にいる幽霊を成仏させるため、幽霊の本当の姿を鏡に描く「鏡供養」をすることに。
女の心を持つ男の本質――その答えをしみじみと味わう。
理想とは程遠くても、自らのありのままの姿を受け入れる。
決して幸せとは言い難いが、それこそが人の在り方なのだろう。
「畸談みれいじゃ」
知り合いの少女の父が行方不明に。
必死に家族を守ろうとする父親。最後に娘の願いをかなえようとする姿に胸を打たれる。
そして、盲人の瞼の裏にある夕焼け…その赤さ、鮮烈さのイメージが頭から離れない。
「壺中の稲妻」
槇島の親戚が、謎の美青年の虜になる。
誰かを想う、という形は人それぞれ。
惣多の恋の形は意外というか、絵描きらしいというか。
「夜の夢こそまこと」
稀代の女性奇術師の偽者を演じる月子の物語。
彼女の一世一代の芸、それをやり遂げて滅んでいく姿は本当に美しい。
はかなく見えようとも、月子は自らの執念に殉じ、やり遂げたのだ。