

人の業や情念をもの凄い筆力で描いた作品。
怒りや憎しみ、嫉妬など、生きている限り負の感情はわき起こる。
生きている間は理性で押さえていたその感情が、死んだことによって解放されると鬼になってしまうのだろう。
人に罰を与えるのは、かつて人であったもの、という設定も非常に業が深く感じる。
この作品世界では、極楽に行ける人はほとんどいないのではないだろうか。
心から誰も憎まず、誰にも憎まれず生きるのは非常に難しい。
亡者は責め苦を受け続け、やがて解放されるが、鬼となったものが救われるにはもっと複雑な手間がいる、というのが面白い。
鬼蜘蛛の地獄での生活と、生前の地獄のような人生と対比して、「空の青さ」で表される本当の救い――解脱がすごくすがすがしい。
人の魂を救うというのは、それはそれはもの凄く大変なのだなあ、という読後感だった。