

ひきこもり探偵と涙もろい語り手の、日常系ミステリ短編集。
料理や名産品の描写にも力が入っている。
視覚障碍者を尾行するストーカーや、歌舞伎役者に贈られてきた謎のプレゼントなどのミステリが、坂木と鳥井の人間関係を軸にして語られていく。
ミステリは人間関係を主眼に置いていて、人間の奥底に潜むどろどろしたものも多少描いているが、表現の仕方が小奇麗に感じる。
がっつりえぐいのが好きな人には物足りないだろう。
坂木と鳥井の関係は素敵な友情にも見えるが、かなりいびつだ。
しかも、坂木はその歪みに自覚的でありながら、断ち切ることもできない。
甘く優しいオブラートに包んでいるが、それが逆にいびつさを際立てるようだ。
こういう共依存めいた歪んだ関係性がわりと好きなので、楽しく読んだ。
ところで文庫版あとがきはシリーズ次作品のネタバレがひどすぎてどうかと思う。
もちろん好きな台詞や文章を引用するのが悪いとは言わないが、正直これは興ざめだ。
小説の文章というのは、全体の流れを理解しているからこそ、輝いて見えるものなのに。