

しゃばけシリーズ短編集。
「ぬしさまへ」
仁吉に悪筆の懸想文が届く。その差出人が殺されてしまい…。
魔がさす、というのは誰にでも起こりうることだ。それに負けてしまった涙が痛々しい。
「栄吉の菓子」
栄吉の菓子を食べた隠居が死んだ。
ひねくれていつつも、ある意味一本筋の通った動機がいい。
「空のビードロ」
若だんなの異母兄、松之助が長崎屋に来るまでの話。
長崎屋の面々は、裕福なおかげか結構明るい印象があるが、かつかつな生活を送る東屋では厳しさの方が垣間見える。
余裕のない生活では、魔がさすことも、心に飼ってしまった鬼に負けることも多いのだろう。
松之助の心に生まれた闇を救うビードロの描写がすごく綺麗で好き。
「四布の布団」
若だんなの新しい布団からすすり泣き声がする。
己にも他人にも厳しいのは美徳かもしれないが、限度があるという話。
「仁吉の思い人」
千年の恋。
ずっと想い続ける吉野や仁吉もすごいが、生まれ変わっても相手を忘れない「鈴君」は相当すごい。
「虹を見し事」
若だんなの周りから、妖の影が消えてしまった。
いつもと違う雰囲気で進む物語。明かされた真相は厳しいが、若だんなの成長が丁寧に描かれていて好き。