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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「うそうそ」畠中恵





しゃばけシリーズひさしぶりの長編。
箱根まで湯治の旅に出る若だんな。

一太郎と松之助、仲の良い兄弟っぷりが微笑ましい。
幼いまま千年生きたせいかちょっと精神がアンバランスなお比女、どん底から這い上がってしたたかに生きる新龍など、新キャラも魅力的。

シリーズを通して己の在り方によく悩んでいる若だんなだが、そのぶんお比女の悩みにも共感できるのだろう。
クライマックスで、命がけの決断を迫られた若だんなの肝の据わりっぷりがいい。
あの場面であっけらかんとしてる強さが、若だんなの魅力だ。


「おまけのこ」畠中恵




しゃばけシリーズ短編集。

「こわい」
若だんなと栄吉の喧嘩。
飲めば一流の職人となれる薬…それに頼るのは怖い、と言い切れる栄吉は強い。

「畳紙」
お雛の厚化粧の謎解き話。
口は悪いが根はやさしい屏風のぞきが魅力的。
妖は人と違う性質を持つ、と作者はよく書いているが、屏風のぞきには結構人間味がある。

「動く影」
若だんなと栄吉が子供だった頃の冒険。
五歳とは思えないほど頭の回転が良いが、描写がいちいちかわいらしい。

「ありんすこく」
吉原の禿を足抜けさせる騒動。
楼主夫婦、かえで、まつば…それぞれの気持ちが胸にせまるだけに、何とも言えない。

「おまけのこ」
鳴家が主役の騒動。
真珠を月に例える感性がかわいい。




「ねこのばば」畠中恵






しゃばけシリーズ短編集。



「ぬしさまへ」畠中恵




しゃばけシリーズ短編集。


「ぬしさまへ」
仁吉に悪筆の懸想文が届く。その差出人が殺されてしまい…。
魔がさす、というのは誰にでも起こりうることだ。それに負けてしまった涙が痛々しい。

「栄吉の菓子」
栄吉の菓子を食べた隠居が死んだ。
ひねくれていつつも、ある意味一本筋の通った動機がいい。

「空のビードロ」
若だんなの異母兄、松之助が長崎屋に来るまでの話。
長崎屋の面々は、裕福なおかげか結構明るい印象があるが、かつかつな生活を送る東屋では厳しさの方が垣間見える。
余裕のない生活では、魔がさすことも、心に飼ってしまった鬼に負けることも多いのだろう。
松之助の心に生まれた闇を救うビードロの描写がすごく綺麗で好き。

「四布の布団」
若だんなの新しい布団からすすり泣き声がする。
己にも他人にも厳しいのは美徳かもしれないが、限度があるという話。

「仁吉の思い人」
千年の恋。
ずっと想い続ける吉野や仁吉もすごいが、生まれ変わっても相手を忘れない「鈴君」は相当すごい。

「虹を見し事」
若だんなの周りから、妖の影が消えてしまった。
いつもと違う雰囲気で進む物語。明かされた真相は厳しいが、若だんなの成長が丁寧に描かれていて好き。

「しゃばけ」畠中恵





病弱な若だんなが妖怪たちとともに事件を解決するシリーズ、第1作目。
江戸の粋を感じさせる、洒落た文章がいい。
軽快で読みやすく、するすると先に進める。

時代物は用語や背景などの違いが壁となりがちだが、必要以上に難解な用語を使わず、わかりやすく説明が入っている。
全体の構成も丁寧に書かれているので、再読するとまた楽しめる。

お江戸ミステリでいい小説なのだが、しゃばけの特徴はなんといっても登場人物にあるだろう。
とにかく、人も妖怪も人物造形が面白い。
若だんなは病弱で大事に育てられたからこそ、己の在り方を考え、芯の強さが感じられる。
仁吉と佐助は一見似通っているが、若だんなとの接し方は微妙に違う。
個人的に好きなのは屏風のぞき。皮肉屋だが、きちんと若だんなを見守る姿に好感が持てる。


「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉




お嬢様刑事に仕える毒舌執事が謎解きをする連作短編集。
文章は軽くて読みやすい。
すごいトリックがあるわけではないが、この作者のユーモア感覚がわりと性に合うので楽しく読めた。


「手紙」東野圭吾




強盗殺人犯の弟して生きる半生を綴った物語。

平凡な少年が、犯罪者の身内としての扱いを受けるうちに、悩み、葛藤し、徐々に性格が変わっていく。
一方、罪を犯した兄は、刑務所で何年もの時を過ごしても、それほど性格が変わることはない。
刑務所で過ごす時間は、時が止まってしまっているかのようだ。

犯罪者の身内について、普段思いを馳せることは少ない。
だが、もし職場に、近所にそういった人間がいたら…きっと自分も、この小説に出てくるような反応を見せるのだろう。

差別はいけない、と教育されている。それは正しい。
しかしこの小説では、差別を受けることこそ贖罪である、と語っている。
おそらく、強盗殺人犯である剛志の贖罪は、弟に縁を切られた時から本当に始まり、釈放されても一生続くのだろう。

非常に胸にせまる物語だ。
ただ、終章のシーンが、ほのかな救いをあたえてくれる。

「天使の耳」東野圭吾




交通事故によってわき起こる、人々の情念を描いた連作短編集。

一つ一つの話を単独で読むと面白いのだが、ほとんどの作品が「被害者の復讐」というテーマなので、似たような作品が並んだ印象を受けてしまい、残念。
偶然の積み重ねが結末につながる「捨てないで」が好き。

        
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管理者:dusk

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