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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「ななつのこ」加納朋子




作中作「ななつのこ」をめぐる往復書簡を軸にした連作短編集。
主人公がリアルタイムで遭遇する日常の謎と、作中作の謎が絡みあいながら解き明かされる。
文章は細やかな描写で美しく、しんみりさせる。

「スイカジュースの涙」
スイカジュース事件の顛末は途中であらかた想像はつくが、ベビーカーの女性については頭から抜けてて気づかなかった。

「モヤイの鼠」
贋作騒動に見せてのちょっとずらした展開で、作中作はミスリードとなってる。
現代アートならよくありそうな話だ。

「一枚の写真」
やむにやまれぬ思いから人の物を盗ってしまう話はなんとも言えない苦味がある。
作中作は単なる無邪気でいい話だが。
写真を盗んだ動機と、面と向かって謝れなかった彼女の意気地のなさは嫌いじゃない。

「バス・ストップで」
綺麗な話だが、謎の解き方はちょっと大味な気がする。
連作短編としてのつなぎ的な立ち位置の話だろう。

「一万二千年後のヴェガ」
夜空を旅する恐竜風船を想像すると笑ってしまう。
なかなかのどかな風景だ。

「白いタンポポ」
自分が世の中の大多数には所属していないと認識したとき、とてつもない孤独感に襲われる。
そんな時に出会う、少数派でも毅然と生きているように見える人の存在は非常に鮮烈な光明なのだ。

「ななつのこ」
連作短編としてのまとめ作品。
作者の正体、作中作が生まれた過程、作品全体が綺麗にまとまって、あたたかい気分で読み終える。



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