

落語家と女子大生の日常の謎系ミステリー連作短編集。
ゆったりと時間が流れるような文章がいい。
しとやか、繊細、柔らか、温かいといった言葉が似合うが、優しいだけでなく、辛さや苦味も含み、深みをあたえている。
「織部の霊」
不思議な夢の話。
夢を見た理由に無理がなく、綺麗にまとまっている。
「砂糖合戦」
喫茶店での二人の会話がかもしだす雰囲気が好み。
ゆったりとした会話から一転、不意打ちで謎へするっと入っていくのもいい。
「胡桃の中の鳥」
のんびりとした蔵王観光の描写がいい。
事件はかなり偶然に偶然が積み重なった結果という感じだが、だからこそ円紫と正ちゃんの「運がよかったら」という言葉をめぐる会話が光る。
「赤頭巾」
青みを帯びた深い緑や、全体を引き締める小さい小さい赤、といった色の描写が印象的。色の美しさがどろどろとした話を包み込んでいる。
「空飛ぶ馬」
クリスマスのあたたかい話。馬が空を飛ぶ、という表現が粋。
短編集の締めくくりにちょうどいい。