

北森鴻作品の特徴の一つに、料理の描写がやたら美味しそうだ、というものがある。
この作品は、思わず唾を飲み込むような料理の描写で満載の連作短編集だ。
料理の種類も幅広い。
素材が謎だが絶品の天麩羅、市販のルーとは思えないカレー、さらにはラーメン、ビール、チャーハン、梅酒などなど…それぞれが素材や作り方が丁寧(かといってくどくもない)に描かれ、食べた時の見た目や匂い、熱さ冷たさによって裏付けされた味の描写が脳内にしみいるようだ。
まさに自分の口に料理を入れてもらったような気分になる。
小説全体の構成も素晴らしい。
複数のストーリーが最後に収束し、大きなストーリーになる…というのはもう珍しい構成ではないが、この作品ではより複雑な構成になっている。
ひとつひとつの良質な短編が、章タイトルに表わされるようにひとつのコース料理となって、より美味しく味わうことができる。
ミステリとしては多少アンフェアかな、と思わせる部分もあるが、非常に楽しめた。