

江戸川乱歩のコレクションをめぐる長編。
シリーズのキーパーソン、栞子の母もついに登場した。
いくつもあるさりげない伏線と、それに基づいた二転三転する展開が面白かった。
不器用ながらもしっかり進んでいく栞子と大輔の関係も微笑ましい。
智恵子にとって、本質的に自分と似ており、古書という趣味に同じくらいの情熱を持つ娘、栞子は自分の分身のようなものなのだろう。
「よるの夢」に生きる智恵子にとっては、栞子を「うつし世」にとどめる大輔がうとましい存在になってしまった。
個人的には「よるの夢」の世界には非常に魅力を感じるし、そこで生きる母娘、というのも蠱惑的だが、そんな展開にはならないんだろうなあ。
幻想小説以外はたいてい「うつし世」を肯定するむきがある。
栞子はたとえ「よるの夢」に魅かれても、最終的には「うつし世」に戻ってくるのだろう。