

"火の色は愉しかった"
印象的な一文で始まる、ブラッドベリの名作。
本の所有や読書が禁じられ、もし見つかれば家ごと焼きつくされてしまう世界。
焚書官モンターグは、ふとしたことから仕事に疑問を覚え始める。
個人的に非常に印象に残ったのは、モンターグの上司ビーティだ。
焚書官たちを率いる立場でありながら、主人公を追いつめる時にはさまざまな本の引用を使う。
知識を破壊する体制側でありながら、博識であるという皮肉。
あくまで想像だが、おそらくビーティも自らの任務に反し、本を読んでいたのではないだろうか。
仕事に疑問を持ちながらも、生きていくために自分の心をねじ伏せ、本を焼き続けていたのではないだろうか。
モンターグを説得する言葉は、かつて彼が自分に言い聞かせたものなのかもしれない。
だから彼は、モンターグに焼かれるしかなかったのだ。
物語の終盤、都市の壊滅を目の当たりにしたモンターグ。
起こったことを記憶し、理解し、いつの日か自らの言葉で語りだそうと決意するその姿には、先の大震災を思い起こさせられる。
道を間違え、転ぼうとも、再び起き上がり歩き出す――そんな人類への希望を感じさせる結末だった。