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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「探偵ガリレオ」東野圭吾




不可思議な現象が絡んだ殺人事件を、物理学者が解決する連作短編集。

一見超常現象にも思える謎と、それを明快に解き明かす湯川の解説、そして裏で絡みあう人間関係が相まって結構面白かった。

個人的に気に入っているのは「転写る」のラスト。被害者が見つかるきっかけとなった現象を、被害者が論文として書いていた――あくまで偶然の一致、でも穿って見れば意志を感じることもできる、この絶妙なバランスが好み。


「ミス・メルヴィルの後悔」イーヴリン・E・スミス(長野きよみ)




死ぬ気になれば何でもできる、という。
上流階級のスーザン・メルヴィルは経済的に追い詰められて自殺を決意するが、決行直前、自分を追いつめた人物を衝動的に射殺してしまう。
その腕を殺し屋に認められたミス・メルヴィルは、殺し屋として雇われることに…



「心地よく秘密めいたところ」 ピーター・S・ビーグル (山崎淳)



墓地で密かに暮らす男と、だんだん物事を忘れていく死者たち、そして鴉の物語。

どの文章もとても丁寧で、情景や心情がこと細かに描かれている。
それはいいことなのだが、すべての文章がそうであると濃厚な味付けで噛みごたえのあるフルコース料理のようなもので、美味しいけど読むのに時間がかかる。
意味のない言葉や難解な表現が並んでいるわけでもないので読み飛ばせない。



「暁天の星 鬼籍通覧」椹野道流





本職の法医学者の描く法医学小説。
解剖の描写はさすがにリアルで、なるべく具体的な絵を想像しないように読んだ。
話の流れ的にてっきりミステリーだと思って読んでいたので、オチは少々肩すかしに感じてしまった。
あくまで死因究明にこだわり、法医学者としての領分を全うしようとする理想と、不可解な事件を究明しようと行動してしまう人情の狭間でのゆらぎが登場人物たちの魅力だろう。

「調幻の氷翠師」麻木未穂




男性が愛の証として女性の爪に美しい刺青「リーフィン」をする「青入れ」という風習のある異世界ファンタジー。
愛の証を目に見える形で示すことが当然とされる世界観だ。

リーフィンと対照的に、シェネラとルネの愛の証が周囲に示されることはない。
シェネラの腕輪の意味を理解するものは少なく、ミコーの「あかし」は人目に触れない。
周囲にどう見られているかを意に介せず、ただひたすら己の信じた道を進み、愛を貫くシェネラが凛々しく、美しい。

物語を綴る文章もまた美しい。
調幻に青入れ師、氷翠、奉愛者、神愛妃など造語も多いがそこまで気にならないし、料理の描写は美味しそうだ。
そして構成も綺麗にまとめあげ、さりげない伏線がクライマックスを盛り上げてとても面白かった。
ぜひ続編を読んでみたい。






「ご恩、お売りします。恩屋のつれづれ商売日誌」朝倉景太郎




会った日から一週間しか相手の記憶に残らない男が「恩を売る」ために依頼人の悩みを解決する短編集。
主人公の背負った運命が、ストーリーにもの悲しさをあたえている。
最終話で翔子が恩屋を忘れてしまうシーンが切なくて好き。



「ノーゲーム・ノーライフ 3 ゲーマー兄妹の片割れが消えたようですが……?」榎宮祐




ノーゲーム・ノーライフ3作目。
空消失の謎と、バーチャルリアリティ体感FPSの二本立て、といったところか。
前作、前々作と、格段に読者を惹きつける力が強くなっていると思う。

兄を失った恐怖に立ち向かい、その真意をつきとめる中で語られる兄妹の絆がいい。
FPSは常人以上の能力で行うアクションが面白かったし、最後に勝負を決める意外な一手もよかった。



「ノーゲーム・ノーライフ 2 ゲーマー兄妹が獣耳っ子の国に目をつけたようです」榎宮祐




ノーゲーム・ノーライフ2作目。
新キャラのジブリールがなかなか個性爆発で面白い。
本や知識への偏愛は本好きとして親近感を覚える。
具現化しりとりも、勝ち方が綺麗にまとまってて前作のチェスゲームよりだいぶよかった。

ジブリール戦や獣人種とのやりとりで、他種族と人類種の圧倒的な能力差が明示される。
圧倒的な差をどうやって覆していくのか、わりと熱い展開になってきた。


「ノーゲーム・ノーライフ 1 ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです」榎宮祐






ゲームの達人兄妹が異世界に召喚されて無双する話。
あとがきによるともともとは漫画のプロットとして書かれたものだそうで、まあそうだろうなあ、といった文章。
ダッシュ、ルビ、傍点、倍角文字の多用はいかにもラノベだが、ダッシュと傍点はさすがに多すぎた気もする。
いわゆるネットスラング、パロディネタも多いが、主人公たちがオタク設定であるのでそれほどは気にならない。ネタを口に出して喜ぶ気持ちもまあ分かる。

兄妹は元の世界へ帰還せず、新しい世界で生きることを決める。
そこは気にいった。
昔から、主人公たちが異世界での冒険を終えた後、自分の世界に戻っていくことを非常に寂しく思っていたので。


「火星の人」アンディ・ウィアー(小野田和子)




不慮の事故で火星に残された宇宙飛行士のサバイバル。
使える時間やアイテムが限られる中、頭を絞って次々ふりかかる難題と取り組んでいく。

極限状態の中、非常に重苦しい物語としても書けただろうが、この小説はウィットに溢れていて読みやすい。
これは主人公マーク・ワトニーが生来のムード・メイカーであり、科学者として物事を解決する思考回路をもっていて、厳しい訓練を受けた宇宙飛行士であるからだろう。
さらに、ワトニーのパートのほとんどがログという形で書かれているのが大きい。
脇役であるNASAや<ヘルメス>メンバーは時折その心情が描かれるが、ワトニーの心情はログや通信記録といった形で、リアルタイムで書かれているものはほとんどない。
そのためにワトニーがジョークめかして書いている箇所が目立ち、重苦しさが軽減されているのだろう。
これが普通の小説のように書かれていたら、かなり違った物語になったはずだ。

だが、数少ないからこそ、ログ以外で描かれているワトニーの姿が印象深い。
なかでもアクシデント多発の長距離ドライブを終え、ついにMAVにたどり着いたワトニーの喜びようが、シンプルに書かれているが本当にいい。

そして、最後のログの締めくくり…この短い一文に、ワトニーの想いがぐっと詰まっている。




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管理者:dusk

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