

墓地で密かに暮らす男と、だんだん物事を忘れていく死者たち、そして鴉の物語。
どの文章もとても丁寧で、情景や心情がこと細かに描かれている。
それはいいことなのだが、すべての文章がそうであると濃厚な味付けで噛みごたえのあるフルコース料理のようなもので、美味しいけど読むのに時間がかかる。
意味のない言葉や難解な表現が並んでいるわけでもないので読み飛ばせない。
どこを切り取っても濃厚な物語だが、いくつかより印象に残る場面もある。
生前注意を払っていなかったため、町の音を聞けないマイケルに、ローラが一つ一つ教えている場面や、夜警事務所で生者と死者が歌う場面はしんみりする。
マイケルとローラはお互いから必要とされることで、いずれ訪れる消滅に少しでも抗おうとする。
レベック氏は人々のためにしたことが拒絶されて墓場に逃げ込み、クラッパー夫人に必要とされることで墓場から出ていく。
生きるとは、誰かに必要とされることだと、この本は語っている。