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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「天使の耳」東野圭吾




交通事故によってわき起こる、人々の情念を描いた連作短編集。

一つ一つの話を単独で読むと面白いのだが、ほとんどの作品が「被害者の復讐」というテーマなので、似たような作品が並んだ印象を受けてしまい、残念。
偶然の積み重ねが結末につながる「捨てないで」が好き。

「沈黙のフライバイ」野尻抱介





近未来SF短編集。

ファーストコンタクトや宇宙旅行、火星開発など、言葉にしてしまえば使い古されたテーマではあるが、「ひょっとすると自分が生きている間に実現するかも」と思わせるリアリティがある。

表題作での、「人類って自意識過剰なんじゃない?」と思わせる、ちょっと皮肉気味な最後の一文は気に入った。
ファーストコンタクトものと言えば、人類と異星種族の交流(あるいは対立)を描いたものが多い。
異星種族、という視点を通して人類を表現しているのだ。
こういうあっさりしたファーストコンタクトが、ひょっとすると現実なのかもしれない。

どの短編も、障害をクリアして目標達成した後、さらなる高みを目指すことを決心する。
あくなき人間の探究心に爽快感を感じた。

「南極点のピアピア動画」野尻抱介





ニコニコ動画をモデルにしたSF連作短編集。

基本的には、ピアピア動画を介した小さなプロジェクトが、だんだん大がかりな話になって…といったストーリーである。
少々物事がうまく進みすぎている印象があるが、楽天的な近未来像は好き。
プロジェクトの障害をあえて省くことで、テンポよく読める、ともいえる。

「あーやきゅあ」とのファーストコンタクトシーンはかなり気に入った。


「ひとつ火の粉の雪の中」秋田禎信




最も敬愛する作家、秋田禎信氏のデビュー作。
新潮文庫から復刊されるのを機に、感想などをまとめる。

鬼の血をひき、強大な力「鬼界」を秘めた少女・夜闇(よや)と、最強の修羅である鳳が、荒廃した世界を旅する物語。
二人が目指すのは海。だが、決して到着することができない場所である。

幻想的で、ともすれば装飾過多と言ってしまえる独特な文体。
でも、物語を通して伝わってくることはすごく単純で、骨太である。
17歳でこの作品を書ききってしまったのがすごい。


「バッカーノ! The Rolling Bootlegs」成田良悟





禁酒法時代のニューヨークを舞台に、錬金術師が作り出した「不老不死の酒」をめぐる大騒動を描いた群像劇。

非常にテンポがよく、引き込まれるように一気に読んでしまった。
キャラクターも非常に濃くて面白い。
変な泥棒カップルが一番印象的だったけど、個人的に気に入ったのはマフィア三兄弟。
三人の全く違う性格が、うまく組み合わさってて面白かった。


「スタイルズ荘の怪事件」アガサ・クリスティー(田村隆一)




アガサ・クリスティの処女作で、ポアロシリーズの第1作目。
1982年発行の田村隆一訳版を読了(現在は絶版)。
翻訳があまり好みではなく、少々読みづらさを感じた。

とはいえ、やはりストーリーは面白い。
特にこの毒殺トリックは好み。
長く愛される作品はやはり他とは違うなあ、と思わせてくれる。


「サイン会はいかが?」大崎梢





成風堂書店シリーズ3作目。
1作目と同様の短編集。
随所に書き込まれている本屋の現実と、それに負けない本屋への愛がつまっている作品。

「君と語る永遠」で描かれた父子の絆が良かった。
広辞苑に込められた想いと、それを受けた杏子の言葉が心に沁みる。

表題作「サイン会はいかが?」はテンポが心地よく、引き込まれるように読んだ。

「ヤギさんの忘れもの」では、常連客の老人とパート主婦の交流がじんわり胸にくる。
手紙の隠し場所にもにやりとした。




「晩夏に捧ぐ」大崎梢





成風堂書店シリーズ2作目。
今回は「まるう堂」という老舗の本屋に「出張」し、幽霊騒ぎに挑む。

地元から愛され、長く続いてきた本屋の描写が素敵だ。
出版業界の苦境も、どんどん潰れていく小さな本屋もきちんと書いているので、余計に「まるう堂」の存在が心に沁みる。

本題のミステリ部分については、可もなく不可もなく、といった印象。



「配達あかずきん」大崎梢




本屋を舞台にしたミステリー短編集。
本屋ならではの仕組みを存分に生かしたストーリーが面白かった。

特によかったのが「パンダは囁く」。
数少ない手がかりから本を探す、という本屋ミステリとしては王道のストーリーが、意外な結末につながっていく。
真相に気付いた多恵が選んだある本や、その渡し方にぞくっときた。
ラストの清水老人の行動も粋だ。

表紙デザインが実際にある本が平台に並んでいるようで面白い。
思わず未読の小説をチェックしてしまう。
この「配達あかずきん」もちゃんと並んでいる。表紙は真っ白だけど。

巻末には本屋関係者の対談があり、これがまた非常に興味深かった。
私は本屋に勤めたことがないので、この小説がどこまでリアルなのかはよく分からないのだが、対談を読むと細部のリアルさに気付くようになる。
本屋の客の問い合わせもいろいろあるようで、小説より面白いものもあった。


「百億の昼と千億の夜」光瀬龍




非常に壮大なスケールのSF小説。
表題の通り、百億の昼と千億の夜を繰り返してもまだ続く時間。
あれほど広大に感じたのに、さらに大きな視点を持つ空間。
ラストの気の遠くなるような壮大さに、ただただ圧倒された。




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管理者:dusk

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