「剣の輪舞」から18年後の物語。アレクの姪キャザリンの成長譚。
アレクはますます変人っぷりに磨きがかかり、狂公爵として悪名を轟かせている。しかもリチャードがそばにいないようだ。いったいふたりに何が……と前作の読者はやきもきさせられる。
第二部でアレクとリチャードが邂逅した時、アレクの台詞が「剣の輪舞」ラストと同じだった。アレクはああやってさりげなさを装いつつ、実はリチャードに受け入れられるかどうか内心不安なのかもしれない。
キャザリン視点ということもあり、リチャードが人間的に完成されているように見える。田舎で穏やかに暮らしている剣の達人となれば誰が見てもそうなのかもしれないが。アレクの変人っぷりが際立つせいで、端から見れば公爵の片想い状態だ。とはいえ前作でも落ち着いた物腰のリチャードが内面はアレクにぞっこんだったのだから、リチャードの内心が描写されればアレクを失うことへの不安が渦巻いていた可能性はある。
さて、主人公はうら若い娘のキャザリンなのだが、その成長っぷりはなかなか痛快だ。
女性は父あるいは夫の所有物であり、彼らに従うことが美徳で、男装、ましては剣術などとんでもないとされる価値観の社会。最初は嫌々ながらも、男装し剣の修行や人前での決闘を経て、だんだん自我を確立していく彼女は魅力的だった。