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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「クリムゾンの迷宮」貴志祐介






火星の迷宮、と称される見知らぬ土地で開始された命がけのサバイバルゲーム。
藤木は生き残ることができるのか…

1999年に書かれた作品だが、設定の特殊さもあって古さを感じさせない。
たぶん、今から十年後に読んでもそうだと思う。

とにかく物語に引き込む力がすごい。
全体を通して与えられる情報量は結構多いのだが、ゲームブック形式をうまく利用し、どんどん読み進めることができる。
ゲームのからくりが判明してきた後半には、もうページをめくる手が止まらなかった。
ラストの余韻も印象的。


「Yの悲劇」エラリー・クイーン(越前敏弥)






エラリー・クイーンの代表作と言ってもいい作品。
前作よりもかなり悲劇的な物語だ。
犯人の行動も明かされた真相も非常に美しい構成なのだが、この作品の要は「彼」の選択だろう。
一線を越えてしまったその苦悩が、非常に重苦しい印象を残した。




「竜が飛ばない日曜日」咲田哲弘





気が付いたら、世界が変化してしまっていた。
竜が支配し、その餌となることが人の無上の喜びとされる世界を抜け出そうと試みる貴士と瑞海。
さらに瑞海は、自身が同じ日を二回繰り返してることに気付く――

理不尽な世界で死にゆく間際、ひたすら友人を想う願いの強さは、どれほどのものだろうか。
竜裕の、嶌田の、そして千伽の最後の願いが、重く迫ってくる。

構成上少々読みにくい部分(<第一>なのか<第二>なのか分かりにくい)もあったが、優秀賞を受賞したのも納得の作品。




「私たちが星座を盗んだ理由」北山猛邦





なんとも言えない後味が残る短編集。
裏表紙には「すべてはラストで覆る!」と煽っているが、そこまで驚天動地のどんでん返しがあるわけではない。
どちらかと言うと、カバー袖の「主人公たちの物語は余白に続く」という著者の言葉がしっくりくる。

以下、ネタバレを含む各編の感想。

「アモンティラードの樽その他」エドガー・アラン・ポー(大岡玲)





ポーの短編集。注釈が充実している。

「10ドルだって大金だ」ジャック・リッチ―(藤村裕美他)





ひねりの効いたもの、ブラックなもの、コミカルなものなど14作品の短編集。


「妻を殺さば」(白須清美)
財産目当てに逆玉に乗った男が、妻を殺そうと画策する。
登場人物の九割がクズ。
オチはありふれているけど、嫌いじゃない。

「毒薬であそぼう」(谷崎由依)
とある家に投げ込まれた青酸カリの丸薬を、いたずらな姉弟が隠してしまった。
コミカルに進むストーリーと、オチの黒さのコントラストが印象的。

「10ドルだって大金だ」(谷崎由依)
銀行の現金が帳簿と合わない。なんと、10ドル多いのだ。
一日の猶予を取り付け、なんとか切り抜けようとするが…
お金が増えた理由には脱力。

「50セントの殺人」(白須清美)
精神病患者の隔離施設にいる男が、自分を閉じ込めた親類を殺そうとする。
うまいこと口の回る主人公の会話が好み。
オチにはニヤリとした。

「とっておきの場所」(好野理恵)
妻を殺し、絶対に見つからない場所に死体を隠した男。その場所とは?
意外な展開にすっかり騙された。

「世界の片隅で」(好野理恵)
少々頭の弱い男が強盗に失敗し、スーパーマーケットに隠れる。
彼が最後にした選択は、私も子供のころに夢想したことがある。
ちょっとうらやましいラストだ。

「円周率は殺しの番号」(谷崎由依)
男が脅迫される。殺人の証拠は車のナンバープレートで…。
短いが、オチが捻られている。

「誰が貴婦人を手に入れたか」(白須清美)
贋作を使って大儲けしようとするカップル。
選んだ手段が秀逸。
確かに、一番安全かつ利益の出る方法だ。

「キッド・カーデュラ」(好野理恵)
新人だが、滅法強いボクサーのカーデュラ。
彼の正体は序盤でわかるが、最後まで明記しないところが好み。

「誰も教えてくれない」(藤村裕美)
調査偽装を依頼された探偵、ターンバックル。
後出しの多いミステリを読んだ時って、こんな感じになるなあ。

「可能性の問題」(藤村裕美)
迷推理が爆発するターンバックル。
表題通り、可能性だけ考えたら何でも有りなわけで…。
名探偵コナンの毛利小五郎を連想する。コナンがいないところが悲劇。

「ウィリンガーの苦境」(藤村裕美)
記憶喪失の男の過去を探るターンバックル。
相変わらず途中で推理を間違っているが、まあ結末はめでたしめでたし…かな?

「殺人の環」(藤村裕美)
連続殺人犯に挑むターンバックル。被害者をつなぐミッシング・リンクとは?
ターンバックルは、ミステリを穿って読みつつもあっさり騙される読者のようだ。
なんだか親近感を覚える。

「第五の墓」(藤村裕美)
死体のない墓と、棺のない墓の謎に挑むターンバックル。
珍しく推理が当たったようだが…。
彼のいい人っぷりが好み。














「アンクスの海賊」野尻抱介




クレギオンシリーズ第3巻。
メイが大活躍。
知的な海賊と頭脳対戦というのがユニーク。


「フェイダーリンクの鯨」野尻抱介




クレギオンシリーズ第2巻。
無重力状態で世代を重ねた人々の生活描写が、なかなか現実的。
メインキャラクター三人の役割がはっきりしていて、でこぼこトリオというか、チームものの面白さが楽しめる。



「ヴェイスの盲点」野尻抱介





未来の銀河を舞台にしたスペースオペラ、クレギオンシリーズ第1巻。
文章はライト感覚で読みやすく、科学的考証もしっかりしていて分かりやすい。
設定の裏付けがきちんとしているので、宇宙での生活が現実味を帯びて感じられる。
ロイド、マージ、メイのキャラクターも、それぞれ味があって楽しく読めた。




「メイン・ディッシュ」北森鴻





北森鴻作品の特徴の一つに、料理の描写がやたら美味しそうだ、というものがある。
この作品は、思わず唾を飲み込むような料理の描写で満載の連作短編集だ。
料理の種類も幅広い。
素材が謎だが絶品の天麩羅、市販のルーとは思えないカレー、さらにはラーメン、ビール、チャーハン、梅酒などなど…それぞれが素材や作り方が丁寧(かといってくどくもない)に描かれ、食べた時の見た目や匂い、熱さ冷たさによって裏付けされた味の描写が脳内にしみいるようだ。
まさに自分の口に料理を入れてもらったような気分になる。

小説全体の構成も素晴らしい。
複数のストーリーが最後に収束し、大きなストーリーになる…というのはもう珍しい構成ではないが、この作品ではより複雑な構成になっている。
ひとつひとつの良質な短編が、章タイトルに表わされるようにひとつのコース料理となって、より美味しく味わうことができる。

ミステリとしては多少アンフェアかな、と思わせる部分もあるが、非常に楽しめた。



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管理者:dusk

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