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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「ビブリア古書堂の事件手帖5―栞子さんと繋がりの時」三上延




前作の告白に返事が返されるまでの連作短編。

いわゆるミステリシリーズでは主要キャラの関係に大きな変化は起こらないことが多いが、ビブリアシリーズは二人の関係に焦点を当てているためか、わずか五巻で大きく進展したものだ。


智恵子にとっては、家族の人生も、おそらくは自分の人生すらも一つの物語に過ぎないのだろう。
自分の人生という物語を紡ぎながら、そこから半分抜け出し、一つ上の次元から自分の物語を俯瞰するという感じだろうか。
想像してみると、少し孤独だ。だから栞子を誘うのかもしれない。

栞子も智恵子に似た人間だが、大輔の出した答えには相当安堵しただろう。
まあ、子供ができたらそう簡単にはいかなくなると思うけど。
それとも、英才教育を受けたサラブレッドが生まれたなら、家族皆で旅に出るのかな?





「ビブリア古書堂の事件手帖4―栞子さんと二つの顔」三上延





江戸川乱歩のコレクションをめぐる長編。

シリーズのキーパーソン、栞子の母もついに登場した。
いくつもあるさりげない伏線と、それに基づいた二転三転する展開が面白かった。
不器用ながらもしっかり進んでいく栞子と大輔の関係も微笑ましい。

智恵子にとって、本質的に自分と似ており、古書という趣味に同じくらいの情熱を持つ娘、栞子は自分の分身のようなものなのだろう。
「よるの夢」に生きる智恵子にとっては、栞子を「うつし世」にとどめる大輔がうとましい存在になってしまった。
個人的には「よるの夢」の世界には非常に魅力を感じるし、そこで生きる母娘、というのも蠱惑的だが、そんな展開にはならないんだろうなあ。
幻想小説以外はたいてい「うつし世」を肯定するむきがある。
栞子はたとえ「よるの夢」に魅かれても、最終的には「うつし世」に戻ってくるのだろう。



「月と炎の戦記」森岡浩之




勝気な少女カエデとひねくれた神ツクヨミ、皮肉屋大兎ツユネブリのトリオ漫才的な掛け合いが楽しい作品。

神を呼ぶための主な方法が罵倒、というのもユニーク。
決着のつけ方、ラストの締め方も好み。


「時計を忘れて森へ行こう」光原百合





ひたすら優しい世界で謎解きをする話。
恐ろしいまでに優しい世界は、優しすぎるが故に薄いベールで隔てられ、どうしても肌感覚として感じられなかった。
あるいは、私がまだ7つ8つの子供であったなら、その優しさに包まれることができたかもしれない。
もし私がどうしようもない傷を負ったらこんな世界で癒してもらいたいなあ、とも思えるだけに、作品世界に入り込めなかったのは残念だ。

「ビブリア古書堂の事件手帖3―栞子さんと消えない絆」三上延





栞子の母は相変わらず謎めいているが、少しずつ話が進んできた。
収録されている短編も、それぞれ繊細で味がある。
しのぶとその両親の確執は、不器用さからくるもので、いったん雪解けしたら和解は早そうだけど…栞子母娘は一筋縄ではいかないんだろうなあ。


「ビブリア古書堂の事件手帖2―栞子さんと謎めく日常」三上延




栞子と大輔、主役二人が掘り下げられている。
ゆっくりと近づく二人の距離がいい。
古本屋を舞台にした作品は他にもあるが、このシリーズは本の紹介がうまい。
本の書かれた背景や、ストーリーの紹介が魅力的で、思わず読みたくなってしまう。

「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」三上延




古本をめぐるミステリー連作短編集。
構成が良い。最初の話と最後の話がうまく繋がっている。
繊細でちょっと苦味を感じさせつつ、やわらかな雰囲気が素敵だ。
よくあるミステリより、人間の心情を丁寧に扱っている。
かよわく見せてしっかりとした芯やしたたかな面も持つ栞子と、意外と鋭いワトソン役の大輔、二人の微妙な関係も楽しめた。

「代書屋ミクラ」松崎有理





「出すか出されるか法」――三年以内に一定水準の論文を発表できない研究者はクビになる、という法律が施行された世界。
主人公は先輩に誘われ、研究者の論文を代筆する「代書屋」を開業する。

理系の研究室に関わったものなら誰もがうなずくようなリアルさと、主人公の脳内神などのシュールさが合わさって、独特な文章になっている。
理系に縁のない人には、馴染みのない単語が多いだろうから、もっと奇妙な世界に見えていそうだ。
残念ながら、主人公の脳内神やら店主の妙な唄やらは肌に合わなかった。
あと、オリジナリティに欠ける詩がちらほら見受けられるのも気になる。

出てくる登場人物は個性的だが、理系研究者を取りまく状況はかなり現実的だ。
現代の研究は、「役に立つ」「結果を残す」という鎖に縛られている。そうでなければ研究費が捻出できない。
「出すか出されるか法」なんて現実にはないけど、結果を出せない研究者は居場所がなくなっていく。
現実をわかりやすく描写してくれる、いいギミックだ。

どんな研究であれ、「世間にこのように役に立ちます」と標榜しなければ傍流に追いやられる。
私も、「(ものすごく基礎的な研究で病気との因果関係はあまりないけど、たぶん)癌研究の役に立ちます」などと言っていた。
今は再生医療や抗体医薬がトレンドだろうか?

もちろん、「研究は純粋に知的好奇心を満たすためだけに行うべきで、利潤を追うのは不純だ」などとは毛頭思わない。
世のため人のために何かできるのは、やっぱり嬉しいものだ。
それでも、もう少し「役に立たない」研究に光が当たってもいいと思う。
「さいごの課題」の依頼人に、安心して学生がついていける世界になればいいのに。



「百億の昼と千億の夜」光瀬龍




非常に壮大なスケールのSF小説。
表題の通り、百億の昼と千億の夜を繰り返してもまだ続く時間。
あれほど広大に感じたのに、さらに大きな視点を持つ空間。
ラストの気の遠くなるような壮大さに、ただただ圧倒された。




        
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管理者:dusk

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