

「出すか出されるか法」――三年以内に一定水準の論文を発表できない研究者はクビになる、という法律が施行された世界。
主人公は先輩に誘われ、研究者の論文を代筆する「代書屋」を開業する。
理系の研究室に関わったものなら誰もがうなずくようなリアルさと、主人公の脳内神などのシュールさが合わさって、独特な文章になっている。
理系に縁のない人には、馴染みのない単語が多いだろうから、もっと奇妙な世界に見えていそうだ。
残念ながら、主人公の脳内神やら店主の妙な唄やらは肌に合わなかった。
あと、オリジナリティに欠ける詩がちらほら見受けられるのも気になる。
出てくる登場人物は個性的だが、理系研究者を取りまく状況はかなり現実的だ。
現代の研究は、「役に立つ」「結果を残す」という鎖に縛られている。そうでなければ研究費が捻出できない。
「出すか出されるか法」なんて現実にはないけど、結果を出せない研究者は居場所がなくなっていく。
現実をわかりやすく描写してくれる、いいギミックだ。
どんな研究であれ、「世間にこのように役に立ちます」と標榜しなければ傍流に追いやられる。
私も、「(ものすごく基礎的な研究で病気との因果関係はあまりないけど、たぶん)癌研究の役に立ちます」などと言っていた。
今は再生医療や抗体医薬がトレンドだろうか?
もちろん、「研究は純粋に知的好奇心を満たすためだけに行うべきで、利潤を追うのは不純だ」などとは毛頭思わない。
世のため人のために何かできるのは、やっぱり嬉しいものだ。
それでも、もう少し「役に立たない」研究に光が当たってもいいと思う。
「さいごの課題」の依頼人に、安心して学生がついていける世界になればいいのに。