

こだわりのある世界観をもつSF短編集。
世界設定について掘り下げた説明をする作品は少なめ。
「夢の樹が接げたなら」
言語というものが相手に何かを伝えるために発展してきたことを考えると、完全な情報を伝えることのできるユメキは言語の最終形態であり、同時に言語という存在の敗北を示すのだろう。
個人的には人工言語やら社内言語、個人言語の設定の方が気に入ったので、その辺りを詰めて長編にしてほしかったな、とも思う。
「普通の子ども」
この世界ではおそらく特異な存在であるススムが、「普通の子ども」と呼ばれるのはなんとも皮肉だ。
人類が移行したと思われる仮想世界は、まだあまりいい場所ではないらしい。
「スパイス」
植野も非道な人間だが、それ以上にマスコミの残酷性が印象に残った。
「無限のコイン」
なかなかスマートな機械知性体の叛乱。
「個人的な理想郷」
誰もが自由に情報発信し、受け取る側はそれを自由に取捨選択していったら、究極的にはこんな世界になるのだろう。
twitterなどのSNSが発達した今ではかなりリアルな話に感じるが、これを2002年に書いたというのは先見の明を感じる。
「代官」
圧倒的な力を持つ支配階級が緩く支配しているからといって、つけあがってはいけない。
「ズーク」
状況を理解するのに結構読み進めなければならなかったが、わかると結構面白い。
この短編集の中では数少ないハッピーエンドでほっとする。
「夜明けのテロリスト」
この世界が誰かの夢ならば、機械知性体の見る夢はどんな世界を造るのだろうか。