



来日予定のイギリス高官暗殺計画阻止という、リミットの迫る緊迫した捜査の中、龍機兵搭乗要員のひとり、ライザの過去が語られる。
裏切りの一族として後ろ指を指されながら鬱屈した日々を送っていた少女が、ふいに差し出された誇りという光に頼ってしまうのは至極当然のことだろう。
転げ落ちるように事態が悪くなったのは、彼女が悪運を連れた死神に魅入られたせいか。
ライザの壮絶な半生に、沖津とキリアンの頭脳戦、見え隠れする深い闇が絡んだ物語の構成も凄い。織物のように緻密に織られている。
偶然を信じるな、とは沖津のいう外務省の鉄則だが、この物語も全てが必然性をもって構成されているのだ。
特に起死回生の一手、
龍機兵の手話のシーンには震えた。
雨。裏切り。水曜日。ジャム。G線上のアリア。エルティアノ湖の魚。
「NOIR」の時も思ったが、モチーフの繰り返しによる演出が非常に秀逸だ。
畳みかけるような演出に、どんどん取り込まれていくように感じる。
ミリーと緑。「鉄路」と「車窓」。相似形の過去と現在が重なって、ライザとともに幻惑されていく。
テロリストであるライザを憎悪しながら、彼女の過去を知った緑はライザの贖罪を求める。
自死に逃げず、バンシーの搭乗者として闘い続けること――
それはとりもなおさず、ライザがライザ自身として生きることなのだ。
姉のライザを愛するミリー。
テロリストのライザを憎む緑。
ふたりの望みは、奇しくも一致した。
同じ列車に乗った、未知の友人であるライザと緑。
深い闇の中を進むふたりが、魂の自由を手に入れることを願ってやまない。