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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「夢の樹が接げたなら」森岡浩之



こだわりのある世界観をもつSF短編集。
世界設定について掘り下げた説明をする作品は少なめ。


「夢の樹が接げたなら」
言語というものが相手に何かを伝えるために発展してきたことを考えると、完全な情報を伝えることのできるユメキは言語の最終形態であり、同時に言語という存在の敗北を示すのだろう。
個人的には人工言語やら社内言語、個人言語の設定の方が気に入ったので、その辺りを詰めて長編にしてほしかったな、とも思う。

「普通の子ども」
この世界ではおそらく特異な存在であるススムが、「普通の子ども」と呼ばれるのはなんとも皮肉だ。
人類が移行したと思われる仮想世界は、まだあまりいい場所ではないらしい。

「スパイス」
植野も非道な人間だが、それ以上にマスコミの残酷性が印象に残った。

「無限のコイン」
なかなかスマートな機械知性体の叛乱。

「個人的な理想郷」
誰もが自由に情報発信し、受け取る側はそれを自由に取捨選択していったら、究極的にはこんな世界になるのだろう。
twitterなどのSNSが発達した今ではかなりリアルな話に感じるが、これを2002年に書いたというのは先見の明を感じる。

「代官」
圧倒的な力を持つ支配階級が緩く支配しているからといって、つけあがってはいけない。

「ズーク」
状況を理解するのに結構読み進めなければならなかったが、わかると結構面白い。
この短編集の中では数少ないハッピーエンドでほっとする。

「夜明けのテロリスト」
この世界が誰かの夢ならば、機械知性体の見る夢はどんな世界を造るのだろうか。


「密室に向かって撃て!」東川篤哉




烏賊川市シリーズ二作目。
前作で端役として出てきた朱美がメインキャラに昇格し、探偵事務所の家賃滞納に困る大家として活躍している。



「密室の鍵貸します」東川篤哉




烏賊川市シリーズ一作目。
軽妙洒脱な文体で、さくさくと読み進められた。
しかも書かれている情報に無駄がない。
さらっと読み過ごしていたようなことも、すべてが繋がって事件が解明されていく。
いくつかのトリックと偶然の組み合わせによる真相が明らかになった時は、素直に驚嘆した。



「狼と香辛料」支倉凍砂





行商人ロレンスと、豊作を司る狼神ホロの旅物語。
中世欧州風の世界を舞台に、商人同士の腹の探りあいや裏のかきあいを面白く書いている。
全体的に心理戦がメインだが、クライマックスにはアクションも楽しめる。

心情描写が説明的なのは少し残念。個人的にはもっと抒情的な文章が好みだ。
とはいえ、ロレンスとホロの絆がじっくりと深まっていくのは心地よく読める。
ある程度経験をつんだ商人と長い時間を生きてきた狼、お互いがそこそこ切れるために、かえって不器用なやり取りになってしまっているのが微笑ましい。






「天帝妖狐」乙一




トイレの落書きが発端の「A MASKED BALL」と、異形に変貌した男の哀しみを描いた「天帝妖狐」の二編を収録。


「A MASKED BALL」
トイレの壁に書かれた落書きで交流する、お互いに名前も顔も知らない5人。
2ちゃんねるを彷彿とさせる作品だが、これが刊行されたのは2ちゃんねる開設前である。
もちろんネット掲示板は賑わっていたが、ネットはネット、リアルはリアルといった線引きがどこかで成されてたように思う。
著者の先見の明に感服。
匿名掲示板という要素を除いても、自然なミスリードと意外な犯人という展開は面白かった。


「天帝妖狐」
徐々に異形の怪物に変貌していく青年と、純朴な少女の交流。
人としての身体を取られ、人間からも動物からも恐れられる姿で永遠に生きなければならない夜木だが、その心は純粋で温かい。
彼は心無い男たちに私刑され、ついに人間の姿を完全に失ってしまう。
理性を失った夜木は秋山に復讐するのだが、嫌な登場人物が痛めつけられる姿に思わずすっとしてしまった。
そして夜木が我に返った時、私も自分の心に潜む「獣」にぞっとするのだ。
落ち度があるわけでもなく、ただ不運だったがために永劫の苦しみを背負った夜木。
獣に蝕まれながらも人であることをやめなかった夜木はとても強い人間だ。
彼と杏子が別れる場面、他人の言葉としてお互いの感情を伝える描写にぐっときた。

「レーン最後の事件」エラリー・クイーン(鮎川信夫)





ドルリー・レーンシリーズの完結編。

最初の謎の手紙や失踪事件のあたりは退屈だったが、シェークスピアの古書を巡る謎が開示されたあたりからは俄然面白くなった。
個人的に古書を含む本を巡るミステリーが好きというのもあるが、事件の展開も派手で飽きさせなかった。
ただ、ペーシェンスとゴードンのロマンスは退屈で蛇足に感じてしまった。
これは時代性の違い、恋愛観の違いがあるのでしかたないのだろう。



「巨人たちの星」ジェイムズ・P・ホーガン(池央耿)




遥か昔にミネルヴァを離れたガニメアンの子孫、テューリアン達と地球人類が接触する。
彼らと地球人類の持つ情報にはどうも食い違っているようで…


前二作とは違って政治的な駆け引きの多い、サスペンス的な作品。
知略や謀略を張りめぐらしたり看破したり、潜入作戦を敢行したり、果ては宇宙戦争が始まってしまい、わくわくしながら読んだ。

ヴィザーもゾラックに負けず劣らずお茶目でかわいいAIだ。

アメリカのペイシーとソ連のソブロスキンが、お互いをさぐりあいながら協力していくところが好き。



「ガニメデの優しい巨人」ジェイムズ・P・ホーガン(池央耿)





「星を継ぐもの」の続編。
前作ではほとんど謎の存在だったガニメアンが、二千五百万年という時間を超えて現れた。

ガニメアンの出自と、それに由来する温厚な性格が地球人類のそれと対比される。
思考形態や生活習慣の違いからたまにかみ合わなくなるガニメアンと人類を仲立ちするAI、ゾラックがなかなかお茶目でかわいい。



「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン(池央耿)





月で発見された五万年前の遺体を巡るSFミステリー。

謎を解明する様子が細かく書かれていて、とてもわくわくしながら読んだ。
実際の研究を見ているようだ――もっとも、現実にはこれほどとんとん拍子に進むことは稀だが。



「世界堂書店」米澤穂信 編





米澤穂信氏が厳選したアンソロジー。
一筋縄ではいかない、味のある短編小説が収められている。



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管理者:dusk

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