

月で発見された五万年前の遺体を巡るSFミステリー。
謎を解明する様子が細かく書かれていて、とてもわくわくしながら読んだ。
実際の研究を見ているようだ――もっとも、現実にはこれほどとんとん拍子に進むことは稀だが。
チャーリーの手記が物語る戦時の状況、月での行進の描写は生々しくて、息が詰まるようだ。
状況を知ってから序章を読み返すと、なかなか味わい深い。
そしてクライマックスの真相解明は奇想天外で、とても壮大な結論にぞくぞくさせられた。
SFには人類の在り方を批判し、その未来に警鐘を鳴らすものも多いが、この作品が人類にそそぐ視線はあたたかく、心強い。
楽観的すぎると取る人もいるだろうが、私は好きだ。
「ならば、行ってわれわれの正当な遺産を要求しようではないか。我々の伝統には、敗北の概念はない。今日は恒星を、明日は銀河系外星雲を。宇宙のいかなる力も、われわれを止めることはできないのだ」