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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「輝天炎上」海堂尊





「螺鈿迷宮」の続きとなる作品。
「ケルベロスの肖像」の裏側を、天馬、小百合、すみれの三視点から描く。



「ケルベロスの肖像」海堂尊




田口・白鳥シリーズの(一応)締めくくりとなる作品。


「アリアドネの弾丸」海堂尊





この著者の作品はいろいろな方向性でその主張を描いていたが、久々に医療ミステリとしての作品だった。
構成もミステリの王道で、田口も意識せずに重要なキーワードで探偵にインスピレーションを与えるなど、しっかりとワトソン役をこなしている。
前半をたっぷり使って背景の説明をしておいてから、後半で一気に状況を動かし、伏線を回収して謎を解く。



「スリジエセンター1991」海堂尊




「ブレイズメス」の続編、いかにして天城が東城大に敗れたか、という物語。
前作では天城の天才っぷり、輝かしさがクローズアップされていたが、世良との絆が深まるにつれ、内に秘めた弱さ、脆さも描かれる。
それがより天城というキャラクターの純粋さを際立たせ、魅力を深めている。



「ブレイズメス1990」海堂尊





異端の外科医、天城の物語。
法外な報酬を要求しながらも金の亡者ではなく、高い技術を誇るその姿は、かのブラック・ジャックを思い起こさせる。
自らの信念に従い、どうしても助かりたいという気迫を持つ患者のみを助けるところも似ている。
ブラックジャックがあくまでも個々の患者を助けることのみを貫いたのに対し、天城は日本の医療界全体を救う道を選ぶ。

どうしてもどちらか一方の患者しか助けられないならば、より多くの金を払う患者を救うという天城理論は、他の誰も追随できないような高い技術を持っているからこそできる選択だ。
凡庸な医師が高い報酬を要求すれば、患者は別の医師を選ぶだろう。
天城理論を受け入れられない垣谷や黒崎は、それにより自らの技術の限界を認めてしまっているようにも取れる。

登場当初の天城は気障なキャラだと思っていたが、読み進めるにつれて好感をもった。
まだ若い桐生もちらりと顔をみせ、天城の後押しがアメリカに行くきっかけとなる。
世良も天城に強く影響され、天城の後を追う道を歩き始めたようだ。
「チーム・バチスタの栄光」をはじめ、作品世界の原点となる重要人物にふさわしい存在感があった。

「ブラックペアン1988」海堂尊





「チーム・バチスタの栄光」よりも年前、新人外科医世良の視点から東城大学病院の外科が描かれる。
正直、著者の主張が前面に押し出されがちな他の作品よりも楽しめた。


高階や藤原、花房、猫田といったおなじみの面々もまだ若く、初々しさの残る部分が新鮮で面白い。
老獪さのない高階は、必死に理想の医療を追い求める姿がより鮮明だ。
これまでの作品で描かれてきた高階の根底にあるものは、昔から変わっていないのだと感じる。

垣谷の登場には懐かしさを感じた。
確かに天才外科医でもないが、しっかりと経験を積み、地道に努力してきたのだろうということがうかがえる。

田口、速水、島津も変わらない。
ベッドサイド・ラーニングでは、それぞれの個性がはっきりと出ていて面白かった。
高階と坂田とのつながりにも言及され、白鳥が東城大学病院にくる遠因があることが暗示されている。

既に別作品に登場済みのキャラクターだけではなく、佐伯、渡海という対照的な二人の外科医も強烈な印象を残す。
技術のみに全てをかけて外科医を生きる渡海は無頼だが、かっこいい。
そして、最初はただの権力志向に見える佐伯の、次第に明らかになる懐の深さ、めざす物の大きさに感心する。
二人の因縁が決着する最後の手術シーンには震えた。

右も左もわからないような新人だった世良は、それら全てを見届けながら目覚ましく成長していく。
新人特有の危なっかしさが、若さあふれる熱意に変わっていく様が頼もしく感じられた。

「極北クレイマー」海堂尊



夕張市をモデルに、財政難の市民病院を描く。
産婦人科の妊婦死亡がメインストーリー。

姫宮がドジなしで活躍しているので、意外と能力のある人だったのだな、と感心する。
壊滅的に不器用なだけで…。

多少誇張はされているが、病院の医師や看護師たちもそれなりにリアルだ。
並木看護師のダメンズウォーカーっぷりとか。

ただ、話の中心に西園寺さやかが絡み、彼女の狙いが謎のままなので消化不良感がある。
これ一冊だけではなく、他のシリーズを読まないと楽しめないのではないか。
他のシリーズとの絡みはあらすじ等には明示されていないので、この本で初めて海堂尊作品を読む人も多いだろうし、そういう人にとっては不親切だろう。

白鳥や彦根のような演説キャラが居なかったせいか、物語の最後に世良が登場して作者の主張を語る。
後味はある程度良くなったが、伏線ゼロで唐突に出てくるのはどうなのだろうか。


「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂薫






物語は病院という現場を離れ、霞ヶ関というお役所の会議を舞台に進行する。
新しく登場する人物たちのほとんどが、厚生労働省の関係者だ。
そのなかでは白鳥の上司、坂田のキャラクターが味がある。

基本的には会議を中心に話が進むが、その中で「チーム・バチスタの栄光」の裁判が続いていることが明かされる。
事件としては犯人逮捕で区切りがついていたが、決してそこで終わりではなく、まだ長い戦いがあるのだ。
田口と被害者遺族の邂逅、そして想いの丈をぶつける場面が心に残る。

知略戦、根回し、会議と、なんだか生々しい現実社会の描写に辟易しそう…と思い始めたあたりで、彦根が派手に躍り出てきた。
著者の主張を代弁するかのように、彦根がひたすら無双する。
彼の快進撃は結構痛快で、楽しめた。
「たとえ国家は滅びても医療は必ず残る」という台詞が熱くて、格好いい。
空想論、夢物語にすぎなくても、実現したらいいな、と思わせる世界を見せてくれた。


「螺鈿迷宮」海堂尊






田口・白鳥シリーズと同じ桜宮市を舞台にした作品。
これからのシリーズにとって、重大な設定が書かれている。

前半はにぎやかな三婆やら立て続けに起こる姫宮のドジなど、コミカルな場面も多いが、物語の進行に従って暗い闇が浮きあがってくる。


「ジェネラル・ルージュの凱旋」海堂尊






前作と同時間軸で展開する。
「石頭で机上の空論をこねくりまわす理解の無い上層部」対「ぎりぎりで耐えながら必死に頑張る現場」といった展開で、ミステリーというよりはサラリーマン小説に近くなっている。

速水の存在感がすごく、まさに将軍といえるキャラクターだ。
今作にはエシックス・コミティ、リスクマネジメント委員会、そしてコンビナート火災という三つの戦いがある。
その全てで他のキャラクターを圧倒し、場の流れをかっさらってしまう。
前2作で活躍した白鳥のお株を奪う勢いで、あの白鳥の影が若干薄くなっている。
いかにも典型的な官僚といった風情の沼田を、速水が打ち破っていく様は非常に痛快だ。


現場正義をうたっているが、現場がすべて正しいと言うだけではない。
ルールや規則も大切なのだと語られている。

「手続きを飛ばして正義を貫こうとしても、刃は肝心の所には届かない。いつか必ずしっぺ返しに遭って叩き潰される。」

「たとえワシが気に喰わなくとも、桜宮の医療にはコイツが必要だ。ワシは規則という枠を守って生きる。コイツはその枠を破壊しながら前進する。」


速水以外にも面白い登場人物が出てきている。
事務方の中でも、より良い病院経営という信念がある三船には好感をもった。
白鳥の部下姫宮も登場し、独特なキャラクターが笑いを誘う。
「チーム・バチスタの栄光」では小物っぽかった黒崎教授も、自分が速水にかなわないことを告白し、なかなかの格好よさをみせている。

エシックスコミティやリスクマネジメント委員会の論戦も熱かったが、今作のメインは火災で被害を受けた患者との戦い、オレンジ・スタッドだ。
救える命は救えるだけ救う…その熱気が文面から押し寄せてきた。

すべてが速水の思惑通りに進むかと思えたが、最後に田口が仕掛けた逆転が小気味よく効いて物語は終わる。

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管理者:dusk

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