

「チーム・バチスタの栄光」よりも年前、新人外科医世良の視点から東城大学病院の外科が描かれる。
正直、著者の主張が前面に押し出されがちな他の作品よりも楽しめた。
高階や藤原、花房、猫田といったおなじみの面々もまだ若く、初々しさの残る部分が新鮮で面白い。
老獪さのない高階は、必死に理想の医療を追い求める姿がより鮮明だ。
これまでの作品で描かれてきた高階の根底にあるものは、昔から変わっていないのだと感じる。
垣谷の登場には懐かしさを感じた。
確かに天才外科医でもないが、しっかりと経験を積み、地道に努力してきたのだろうということがうかがえる。
田口、速水、島津も変わらない。
ベッドサイド・ラーニングでは、それぞれの個性がはっきりと出ていて面白かった。
高階と坂田とのつながりにも言及され、白鳥が東城大学病院にくる遠因があることが暗示されている。
既に別作品に登場済みのキャラクターだけではなく、佐伯、渡海という対照的な二人の外科医も強烈な印象を残す。
技術のみに全てをかけて外科医を生きる渡海は無頼だが、かっこいい。
そして、最初はただの権力志向に見える佐伯の、次第に明らかになる懐の深さ、めざす物の大きさに感心する。
二人の因縁が決着する最後の手術シーンには震えた。
右も左もわからないような新人だった世良は、それら全てを見届けながら目覚ましく成長していく。
新人特有の危なっかしさが、若さあふれる熱意に変わっていく様が頼もしく感じられた。