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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「輝天炎上」海堂尊





「螺鈿迷宮」の続きとなる作品。
「ケルベロスの肖像」の裏側を、天馬、小百合、すみれの三視点から描く。






作品の前半、とくに天馬のレポートパートはなかなか面白かった。
インタビュー形式で、これまで登場したサブキャラクターの特徴や行動理念がわかりやすくまとめられている。
天馬視点のフィルターがかかると、少し新鮮な感じがした。
冷泉は、天馬がこれまでの事情を自然に読者に説明するために登場させたキャラクターなのだろうが、そのアクの薄さがかえって特徴的だ。
ベッドサイド・ラーニングで、医師として成長していく天馬の姿も好ましい。
田口が書いたカルテから美智の姿が浮かび上がるところにはぐっと来た。

残念ながら、作品の後半はそれほど楽しめなかった。
小百合は他者視点から見ている分には得体のしれない感じでいいキャラクターなのだが、本人視点になるとわりと小者感が出てちょっと興ざめだ。
それと城崎の設定は後付けにもほどがあるだろう。
クライマックスも「ケルベロスの肖像」で大体わかってしまっているので盛り上がりに欠ける。

正直なところ、この小説は「ケルベロスの肖像」とまとめて一つの作品にすべきだったと思う。
「すべての作品を同じ世界観で描き、つながりを持たせる」という作者の趣向は壮大だし、面白いのだが、同時に必然的な欠点を抱えている。
一つ一つの作品の完成度が低くなり、密度が薄くなってしまうのだ。
とくにこの作者の場合、「この作品で描ききれないことは別の作品で描けばいい」というのが感じられてしまう。
読む方も「どうせ他の作品で繰り返し語られる場面があるだろう」と思ってしまう。
全身全霊を込めて描かれた渾身の一作、というのが生まれにくくなってしまっているのだ。

「スリジエセンター1991」は個人的にかなり面白く読んだのだが、それは天城の人生が完結したせいでもあると思う。
それを考えると、「輝天炎上」で小百合の人生を完結させれば、ぐっと面白くなっただろう。
主要キャラが生死不明な状態だというのは余韻を残すが、この作者だと普通に復活させてきそうだし。
もっと手をかければ面白くなるのに、その一歩手前で世に出てしまった感じのする、惜しい作品だった。





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