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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午





タイトルにひかれて購入。
抒情的な題名とは裏腹に、テンポよくストーリーが進む。
詐欺会社の事件もヤクザの事件も面白く読んだ。

そして、この小説の肝であるトリック。
見事に引っかかってしまった。
この手のトリックにまだ慣れておらず、注意を払わなかった、というのもあるだろうが、本当に上手く構成されていると思う。

最後まで読み終った時、題名の意味がじんわりと胸に沁みてくる。

「ドミノ」恩田陸





かなりスピード感のある群像劇。
東京駅ですべてが収束していくのが面白い。
小学生二人や、ミステリ連合会のこれから先が気になる。カップルは別れそうだけど。
ラストが投げっぱなしになることが多い恩田陸作品だが、この本はちゃんとオチがついてて良かった。


「ひとつ火の粉の雪の中」秋田禎信




最も敬愛する作家、秋田禎信氏のデビュー作。
新潮文庫から復刊されるのを機に、感想などをまとめる。

鬼の血をひき、強大な力「鬼界」を秘めた少女・夜闇(よや)と、最強の修羅である鳳が、荒廃した世界を旅する物語。
二人が目指すのは海。だが、決して到着することができない場所である。

幻想的で、ともすれば装飾過多と言ってしまえる独特な文体。
でも、物語を通して伝わってくることはすごく単純で、骨太である。
17歳でこの作品を書ききってしまったのがすごい。


「サイン会はいかが?」大崎梢





成風堂書店シリーズ3作目。
1作目と同様の短編集。
随所に書き込まれている本屋の現実と、それに負けない本屋への愛がつまっている作品。

「君と語る永遠」で描かれた父子の絆が良かった。
広辞苑に込められた想いと、それを受けた杏子の言葉が心に沁みる。

表題作「サイン会はいかが?」はテンポが心地よく、引き込まれるように読んだ。

「ヤギさんの忘れもの」では、常連客の老人とパート主婦の交流がじんわり胸にくる。
手紙の隠し場所にもにやりとした。




「晩夏に捧ぐ」大崎梢





成風堂書店シリーズ2作目。
今回は「まるう堂」という老舗の本屋に「出張」し、幽霊騒ぎに挑む。

地元から愛され、長く続いてきた本屋の描写が素敵だ。
出版業界の苦境も、どんどん潰れていく小さな本屋もきちんと書いているので、余計に「まるう堂」の存在が心に沁みる。

本題のミステリ部分については、可もなく不可もなく、といった印象。



「配達あかずきん」大崎梢




本屋を舞台にしたミステリー短編集。
本屋ならではの仕組みを存分に生かしたストーリーが面白かった。

特によかったのが「パンダは囁く」。
数少ない手がかりから本を探す、という本屋ミステリとしては王道のストーリーが、意外な結末につながっていく。
真相に気付いた多恵が選んだある本や、その渡し方にぞくっときた。
ラストの清水老人の行動も粋だ。

表紙デザインが実際にある本が平台に並んでいるようで面白い。
思わず未読の小説をチェックしてしまう。
この「配達あかずきん」もちゃんと並んでいる。表紙は真っ白だけど。

巻末には本屋関係者の対談があり、これがまた非常に興味深かった。
私は本屋に勤めたことがないので、この小説がどこまでリアルなのかはよく分からないのだが、対談を読むと細部のリアルさに気付くようになる。
本屋の客の問い合わせもいろいろあるようで、小説より面白いものもあった。


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管理者:dusk

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