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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「世界堂書店」米澤穂信 編





米澤穂信氏が厳選したアンソロジー。
一筋縄ではいかない、味のある短編小説が収められている。



「Zの悲劇」エラリー・クイーン(鮎川信夫)





ドルリー・レーンシリーズ3作目。
主にサム警部の娘、ペーシェンスが活躍する。
前二作に比べて謎解きがどうも大雑把になっているというか、あまりしっくりこなかった。
死刑制度の悲劇性もクローズアップされていたが、前作の結末を考えると、これまたしっくりこない気がする。


「カルメン」プロスペル・メリメ(堀口大学)

カルメン (1956年) (新潮文庫)


周りを散々ふりまわして自分の思うように生きるカルメンは、確かに悪女だが非常に魅力的に映る。
どこまでも自分に正直なカルメンだからこそ、ホセは心底惚れて束縛しようとするし、カルメンはその束縛から逃れようとする。逃げようとするからホセはさらに束縛したがる…という二人の最後はああなる他なかったろうし、カルメンもきっと分かっていたのだろう。
悲劇的な最期をむかえることを予期しながらも、自分の、ジプシーとしての生き方を貫くカルメンには、ほんの少しだけ憧れる部分もある。




「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」アガサ・クリスティ(田村隆一)






「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」と言い残して死んだ男の謎をめぐり、牧師の息子と伯爵令嬢が奔走する冒険活劇。

二人が勢いで突っ走り、相当危うい目に合うのでハラハラしながら楽しく読んだ。
状況が二転三転するので、最後まで気が抜けない。
事件の真相、そしてエヴァンズの正体は意外なもので、すっかり騙されていた。
ラストはうまく着地し、ほっと一息つける。







「華氏451度」レイ・ブラッドベリ(宇野利泰)




"火の色は愉しかった"
印象的な一文で始まる、ブラッドベリの名作。
本の所有や読書が禁じられ、もし見つかれば家ごと焼きつくされてしまう世界。
焚書官モンターグは、ふとしたことから仕事に疑問を覚え始める。



「Yの悲劇」エラリー・クイーン(越前敏弥)






エラリー・クイーンの代表作と言ってもいい作品。
前作よりもかなり悲劇的な物語だ。
犯人の行動も明かされた真相も非常に美しい構成なのだが、この作品の要は「彼」の選択だろう。
一線を越えてしまったその苦悩が、非常に重苦しい印象を残した。




「アモンティラードの樽その他」エドガー・アラン・ポー(大岡玲)





ポーの短編集。注釈が充実している。

「10ドルだって大金だ」ジャック・リッチ―(藤村裕美他)





ひねりの効いたもの、ブラックなもの、コミカルなものなど14作品の短編集。


「妻を殺さば」(白須清美)
財産目当てに逆玉に乗った男が、妻を殺そうと画策する。
登場人物の九割がクズ。
オチはありふれているけど、嫌いじゃない。

「毒薬であそぼう」(谷崎由依)
とある家に投げ込まれた青酸カリの丸薬を、いたずらな姉弟が隠してしまった。
コミカルに進むストーリーと、オチの黒さのコントラストが印象的。

「10ドルだって大金だ」(谷崎由依)
銀行の現金が帳簿と合わない。なんと、10ドル多いのだ。
一日の猶予を取り付け、なんとか切り抜けようとするが…
お金が増えた理由には脱力。

「50セントの殺人」(白須清美)
精神病患者の隔離施設にいる男が、自分を閉じ込めた親類を殺そうとする。
うまいこと口の回る主人公の会話が好み。
オチにはニヤリとした。

「とっておきの場所」(好野理恵)
妻を殺し、絶対に見つからない場所に死体を隠した男。その場所とは?
意外な展開にすっかり騙された。

「世界の片隅で」(好野理恵)
少々頭の弱い男が強盗に失敗し、スーパーマーケットに隠れる。
彼が最後にした選択は、私も子供のころに夢想したことがある。
ちょっとうらやましいラストだ。

「円周率は殺しの番号」(谷崎由依)
男が脅迫される。殺人の証拠は車のナンバープレートで…。
短いが、オチが捻られている。

「誰が貴婦人を手に入れたか」(白須清美)
贋作を使って大儲けしようとするカップル。
選んだ手段が秀逸。
確かに、一番安全かつ利益の出る方法だ。

「キッド・カーデュラ」(好野理恵)
新人だが、滅法強いボクサーのカーデュラ。
彼の正体は序盤でわかるが、最後まで明記しないところが好み。

「誰も教えてくれない」(藤村裕美)
調査偽装を依頼された探偵、ターンバックル。
後出しの多いミステリを読んだ時って、こんな感じになるなあ。

「可能性の問題」(藤村裕美)
迷推理が爆発するターンバックル。
表題通り、可能性だけ考えたら何でも有りなわけで…。
名探偵コナンの毛利小五郎を連想する。コナンがいないところが悲劇。

「ウィリンガーの苦境」(藤村裕美)
記憶喪失の男の過去を探るターンバックル。
相変わらず途中で推理を間違っているが、まあ結末はめでたしめでたし…かな?

「殺人の環」(藤村裕美)
連続殺人犯に挑むターンバックル。被害者をつなぐミッシング・リンクとは?
ターンバックルは、ミステリを穿って読みつつもあっさり騙される読者のようだ。
なんだか親近感を覚える。

「第五の墓」(藤村裕美)
死体のない墓と、棺のない墓の謎に挑むターンバックル。
珍しく推理が当たったようだが…。
彼のいい人っぷりが好み。














「アクロイド殺害事件」アガサ・クリスティ(大久保康雄)





「比類なきジーヴス」P.G.ウッドハウス(森村たまき)




有能な執事が活躍するどたばたコメディ。
イギリスの特権階級の暮らしがメインで、暗さはなく、どこかのんびりした雰囲気もある。
主役のバーティーは少し抜けているというか、だいぶお人よしな放蕩貴族だ。
周囲の人間はアクの強い人々が目立つ。
すぐ恋に落ちて騒動を巻き起こすビンゴには「逆転裁判」の矢張を思い出した。

執事のジーヴスは、仕事としてバーティに仕えているが、別に忠誠を誓っているわけでもない。
主人が賭け事に大損している裏で儲けていたりもする。
主人の派手な服装が気に入らない、という理由で事件を解決し、派手な服を処分するのもパターンの一つだ。
ジーヴスはなかなかの食わせ者で、そこがこの作品が愛されている理由なのだろう。


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管理者:dusk

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