

ひきこもり探偵シリーズ完結編。
鳥井と周囲の人間との交流が徐々に広がり、深まるにつれ、巣立ちの後押しをするか悩み始める坂木。
そんな中、野良猫虐待事件の起こる動物園でいじめの元凶と遭遇し――
文章から妙な甘ったるさが取れて、前作より読みやすくなった感じがした。
料理の描写もより美味しそうになっているのではないだろうか。
今作では動物園のボランティア松谷と、滝本の妹である美月、二人の対照的な女性(少女)が登場する。
おそらく多くの人が松谷にいらつき、美月に好感を抱くだろう。
だが、なぜ二人がそのような性格になったのか、それを想像することこそが大事だと、この作品は語ってくる。
ちなみに、美月の語る、好物がころりと変わった女子の話が結構気に入った。
さて、前2作では鳥井の傷を中心に、坂木と鳥井の関係が語られてきた。
しかし、彼らが前に進むためには、坂木の隠れた傷こそが焦点なのだ。
序盤で、坂木の涙もろさの理由が明かされる。
悪意を目の当たりにしたがために、確実に人の中にある悪意を恐れ、人の優しさにすがりつくように泣いてしまう。
それを念頭に前2作を読むと、また少し違った景色が見えるのかもしれない。
動物園での、谷越との対決。
ひきこもりの原因を作ったいじめの加害者との対決は結構あっさりと終わる。坂木と鳥井が乗り越えるべき壁は、そんなものではないのだ。
滝本によって自分の傷を直視した坂木は、身を切る想いで決断する。
自分が壁を乗り越えれば、後から鳥井が続いてくると信じて。
坂木が鳥井に決意を告げ、自分の部屋に戻ってきた時、彼の涙もろさが私にも伝染してしまった。