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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「たぶんねこ」畠中恵





「跡取り三人」
若だんなは両国の盛り場で、他の店の跡取りと稼ぐ力を競うことになる。
自分の身体の弱さと向き合いながら、必死に頑張る若だんなの姿は応援したくなる。
頭を使い、工夫して商売するのはやはり上手い方だ。
最初に稼いだ四文銭を大事にとっておいてるのには胸がじんとした。

「こいさがし」
花嫁修業とお見合いに巻き込まれる若だんな。
於こんが妙に変わった娘だと思っていたが、その正体に納得。

「くたびれ砂糖」
新人教育に苦労する栄吉。
平太の傍若無人なふるまいが拳固で済まされるのか…。
あまりスッとしないかも。

「みどりのたま」
仁吉が記憶喪失に。
妖怪なのに、記憶を失くしたら人間としてふるまうというのは少し違和感がある。
人間として過ごした時間の方が長くなったのだろうか。

「たぶんねこ」
幽霊として江戸で暮らしたい月丸。
何をやっても長く続かない器用貧乏ながら、最後のチャンスを掴もうと必死に頑張る姿に若だんなは共感したのだろう。
最後はうまく収まってよかった。



「ひなこまち」畠中恵




若だんなのもとに、助けを乞う謎の木札が届く。
誰が書いたのかすらわからないが、若だんなは困っている人を助けようと心に決め…


「ろくでなしの船箪笥」
開かなくなった形見の船箪笥。
開け方は早々に見当がついた。
叶屋の揉め事もできれば解決して欲しかった。

「ばくのふだ」
怪談のうまい噺家の寄席で一悶着あったあと、江戸のあちこちで怪異が起こる。
場久がなかなかいいキャラでかわいい。

「ひなこまち」
雛小町選びで沸き立つなか、着物盗人が横行する。
仁吉と屏風のぞきは行きがかり上、盗人の被害に遭った於しなに手を貸すことに…。
でこぼこコンビのドタバタ冒険劇が非常に楽しかった。
怪しい男達を簀巻きにするくだりとか、若だんなに仲がいいと言われて一緒に否定するあたりとか、本当にいいコンビである。

「さくらがり」
広徳寺の花見で起こる、河童の秘薬による一騒動。
真っ直ぐに妻を想う安居は結構いい男だ。

「河童の秘薬」
河童の秘薬を飲んだ雪柳が若だんなを訪ねてくる。
安居の言った通り、芯が強くてたおやかな雪柳。 お似合いの夫婦が幸せになってほっこりする。



「やなりいなり」畠中恵





「こいしくて」
通町に恋が流行り、若だんなのもとには病気の神が押し掛ける。
前作の影がちらほらしていて、屏風のぞきも若だんなを守ろうといつもより頑張っている。
橋姫の想いも切ないが、それ以上に時花神の想いが胸に刺さった。
時花神が駆けていく後ろ姿が印象的。

「やなりいなり」
記憶喪失の幽霊が長崎屋に居候。
稲荷寿司をつくったり噺を一席ぶったりと、守狐の出番が多い。

「からかみなり」
藤兵衛が三日も戻らない。いったいどこに行ったのか…。
おたえの旦那として過ごしてきたせいか、怪異にやたら鈍い藤兵衛が笑いを誘う。
屏風のぞきがちょっと焦げたからと心配になり、父親をぐるぐる振り回させる若だんなもなかなかいい性格だ。

「長崎屋のたまご」
空から落ちてきた謎の玉と、逢魔が時に生まれた魔。
百魅と三十魅の兄弟喧嘩がかわいい。
空の上はずいぶんと賑やかなようだ。

「あましょう」
栄吉の菓子配達に付き合う若だんな。
新六と五一の不器用な友情が切ない。
彼らに自分たちを重ねたであろう、栄吉と若だんなの言葉にもしんみりした。


「道化師の蝶」円城塔





旅の間にしか読めない本の話が蝶の羽ばたきのようにくるくる変わっていく「道化師の蝶」と、お互いの本を翻訳しあう関係の相手を訪ねる「松ノ枝の記」の二編。


常に己について語っている物語。
幻想的というよりかは、幾何学的な印象を受けた。
単語の選び方、文章の連なり、ストーリーの流れがとても心地よい。
解釈や比喩はいくらでもできそうだが、ただただ物語にひたっていたい。

「問題物件」大倉崇裕




不動産会社の派閥争いに巻き込まれ、クレームを処理することになった恵美子。
無理難題を押しつけられた彼女の前に、犬頭と名乗る謎の探偵が現れる。

犬頭の不思議なパワーでトントン拍子に話が進む。
細かいことは気にせず、ちょっとした謎の解決、無双する探偵、漫才のような会話が楽しめる。
傍若無人にふるまうが、なんだかんだ恵美子に優しい犬頭のキャラクターが良い。




「機龍警察」月村了衛





パワードスーツの重厚なアクションが迫力満載の近未来SF。
だが、一番の魅力は各々「荷物」を抱えた人間たちのドラマだ。

もともと内部軋轢のある警察組織の中でも、特殊な経緯で設立された特捜部は警察内部から煙たがられ、捜査員は出世に眼がくらんだ裏切り者と冷たく扱われる。

その特捜部内でも、契約で雇用された龍機兵の搭乗要員は余所者として扱われる。
さらに、特捜部長の沖津は元外務官僚だ。

かつて警察組織に裏切られながらも、なお警察として生きる望みを捨てきれないユーリ。
だが周りの警察官は余所者として冷たい視線を送る。
自問自答しながら闘う彼の苦悩が胸に迫ってくる。

傭兵の姿は、かつて助けた仲間を殺そうとも、感傷を排し、徹底的にプロフェッショナルであろうとする。
飄々と行動するように見える彼も、自分の感情は欺ききれなかった。


搭乗要員以外でも、警察官として生きる城木、宮近、夏川、由起谷達特捜部の面々も魅力的だ。
未だ真意を見せない沖津の下、そんな彼らが徐々にまとまっていく展開が熱い。



「動物園の鳥」坂木司






ひきこもり探偵シリーズ完結編。

鳥井と周囲の人間との交流が徐々に広がり、深まるにつれ、巣立ちの後押しをするか悩み始める坂木。
そんな中、野良猫虐待事件の起こる動物園でいじめの元凶と遭遇し――

文章から妙な甘ったるさが取れて、前作より読みやすくなった感じがした。
料理の描写もより美味しそうになっているのではないだろうか。



「仔羊の巣」坂木司




ひきこもり探偵2作目。
正直前作よりも文章が甘ったるくなった気がしてちょっと食傷気味だ。]

前作から坂木がどうにも外資系保険営業に見えなかったのだが、今作で会社が出てきてさらに違和感が強くなった。
まあ、もしかしたら世の中にはこういう会社もあるのかもしれない。

今作に含まれている短編は、人間関係のもつれというか、一方通行の――いろいろな意味での片想いがメイン。
なので全体的に切ない雰囲気がある。
坂木と鳥井の関係も周囲が理解し、見守体制ができているようだ。

謎が解き明かされ、誰かの心の傷が開示される時、場に居る栄三郎の存在が大きい。
さすが年の功、といったところか。
坂木や鳥井だけではこうも丸くは納まらないだろうが、栄三郎の重みで程よく話が纏まっている。





「青空の卵」坂木司





ひきこもり探偵と涙もろい語り手の、日常系ミステリ短編集。
料理や名産品の描写にも力が入っている。

視覚障碍者を尾行するストーカーや、歌舞伎役者に贈られてきた謎のプレゼントなどのミステリが、坂木と鳥井の人間関係を軸にして語られていく。

ミステリは人間関係を主眼に置いていて、人間の奥底に潜むどろどろしたものも多少描いているが、表現の仕方が小奇麗に感じる。
がっつりえぐいのが好きな人には物足りないだろう。

坂木と鳥井の関係は素敵な友情にも見えるが、かなりいびつだ。
しかも、坂木はその歪みに自覚的でありながら、断ち切ることもできない。
甘く優しいオブラートに包んでいるが、それが逆にいびつさを際立てるようだ。
こういう共依存めいた歪んだ関係性がわりと好きなので、楽しく読んだ。

ところで文庫版あとがきはシリーズ次作品のネタバレがひどすぎてどうかと思う。
もちろん好きな台詞や文章を引用するのが悪いとは言わないが、正直これは興ざめだ。
小説の文章というのは、全体の流れを理解しているからこそ、輝いて見えるものなのに。




「探偵と怪人のいるホテル」芦辺拓






現実と物語世界の境界線上の雰囲気がたっぷり堪能できる短編集。



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管理者:dusk

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