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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「機龍警察」月村了衛





パワードスーツの重厚なアクションが迫力満載の近未来SF。
だが、一番の魅力は各々「荷物」を抱えた人間たちのドラマだ。

もともと内部軋轢のある警察組織の中でも、特殊な経緯で設立された特捜部は警察内部から煙たがられ、捜査員は出世に眼がくらんだ裏切り者と冷たく扱われる。

その特捜部内でも、契約で雇用された龍機兵の搭乗要員は余所者として扱われる。
さらに、特捜部長の沖津は元外務官僚だ。

かつて警察組織に裏切られながらも、なお警察として生きる望みを捨てきれないユーリ。
だが周りの警察官は余所者として冷たい視線を送る。
自問自答しながら闘う彼の苦悩が胸に迫ってくる。

傭兵の姿は、かつて助けた仲間を殺そうとも、感傷を排し、徹底的にプロフェッショナルであろうとする。
飄々と行動するように見える彼も、自分の感情は欺ききれなかった。


搭乗要員以外でも、警察官として生きる城木、宮近、夏川、由起谷達特捜部の面々も魅力的だ。
未だ真意を見せない沖津の下、そんな彼らが徐々にまとまっていく展開が熱い。






登場人物は皆魅力的だが、一番好きなのはテロ事件の生き残りである緑と元テロリストのライザだ。

機龍の調整作業。わずかな誤差の許されない精密な作業を行いながら、ライザと緑はお互いの過去を抉る会話をする。その言葉は率直で、含みをもたせない。

テロリストであるライザに憎しみを抱きながら、彼女の乗る機体バンシーを技術者として完璧に整備する緑。
その機体で任務をこなしながら、死に場所を求めるライザ。
緑が自らの憎しみに従えばライザは死ぬ。
だが憎いはずのバンシーを技術者として愛する緑は、それをしない。

この危うい均衡、緊張感がたまらないのだ。


著者が原作・脚本・構成をおこなったアニメ「NOIR」で、繰り返し語られた台詞がある。
「愛で人を殺せるのなら、憎しみで人を救えもするだろう」
アルテナが語るこの言葉に、ミレイユと霧香はある答えにたどり着いた。

緑とライザは自らの罪に、感情に、どのように向き合っていくのだろうか。




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