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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「容疑者Xの献身」東野圭吾



天才数学者の石神は、密かに思いを寄せていた隣人母娘が前夫を殺害したことを知る。二人を救うため完全犯罪を企てる彼の前に、旧友の天才物理学者・湯川が現れ……





朴訥とした男が片想い相手のために罪を犯す、と書いてしまえば、ありふれた物語に見える。
実際、中盤まではそこまで目新しい話ではない。刑事相手の腹の探りあいも、当の石神が冷静沈着なので淡々と進んでいく。靖子といい雰囲気の工藤が登場し、嫉妬した石神が不穏な行動を取りだすのも珍しくない展開だ。天才が論理で組み立てた完全犯罪は感情によって崩れ去る……だろうと思っていた。
ところが、湯川によって暴かれた真相は、そんなちゃちな物語ではない。
あまりにも純粋な愛情と、冷徹な頭脳が導き出した解。その震えがくるような重たさは、湯川にある決意をさせる。それが友の意志に反することであっても。友のために。
この作品の要はタイトル通り「容疑者X」のあまりに深い「献身」である。そして、Xの解が解けたのは、湯川が心の底から友を信じたためだ。誰かを純粋に思う気持ちが難問を生み出し、また難問を解いたのである。

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管理者:dusk

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