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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「有頂天家族」森見登美彦




京都で暮らす化け狸と、その他諸々妖怪たちの物語。

主人公の矢三郎は下鴨家の三男。堅物だが土壇場に弱い長兄、蛙に化けたら戻れなくなり井戸に引きこもった次兄、化けるのが苦手で気弱な末弟とそれなりの距離を保ち、恩師の天狗・赤玉先生のもとへ通っている。
赤玉先生はかつて人間の少女をさらって弟子にし、その少女・弁天は天狗よりもなお天狗的に育つ。彼女に恋情を抱く矢三郎だが、あっさりとふられてしまう。その際赤玉先生没落の片棒を担ぐ形となったこともあり、矢三郎は師に負い目をいだくこととなった。






この本の登場人物――いや主に狸だが――の関係は、実に繊細で複雑である。矢三郎の恋した弁天は忘年会で狸鍋を喰う「金曜倶楽部」の一員で、実際彼の父はそこで喰われている。
弁天は矢三郎に「食べちゃいたいほど好き」と言いながら同時にそのことを哀しがるのだ。

「何をそんなに切ながっているんです?」
「私に食べられるあなたが可哀想なの」
「喰わなければよいのではないですか?」
「でも、いつかきっと私はあなたを食べてしまうわ」

父の死に際して思うところのある矢二郎、理由を知っていた母、そして理由を知ってしまった長兄。それぞれの台詞がまた、しっとりと胸にくる。

喰う喰われる関係、言うに言えず胸に秘めたもの、取り返しのつかないことへの後悔。それらがくるくるとかわいらしい毛玉に包まれ、京都の情緒たっぷりな雰囲気も相まって物語り全体に愛おしさがあふれてくる。

そして一転、最終章の息もつかせぬ怒濤の展開。なにもかも吹き飛ばす嵐のような勢いにスカッとする、すっきりした読後感だった。




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