

梓は景との距離を縮め、千絵はセルネットの姿を割り出していく。茜は甲斐の元へ転がり込み、そしてついにセルネットの幹部、ⅨC(ナイン・シー)が本格的に動き始めた。
なお、読んだのは富士見ミステリー文庫版のため、ファンタジア文庫版とは収録箇所が異なっている。
前二巻でじっくり巻いた種が発芽し、爆発的に物語が猛り狂う。ようやく本編開幕、といった感だ。
兎にも角にも、やっと景の内面が明かされたのが大きいだろう。今まで神秘的な強者として描かれていた景の、梓への純朴な想いが微笑ましい。
その裏で、敵幹部ⅨCがついに本格始動と思えば、執行細胞(ファースト・セル)の男まで出てくる。ⅨCはちょっと中堅っぽくてそこまで迫力はないが、執行細胞はなかなか得体が知れず、ラスボスの威厳が醸しだされている。
ⅨCの襲撃を華麗に返り討ちにするウィザードの戦略は鮮やかで、それに続く甲斐との死闘も大盛り上がり、まさに『祭典』にふさわしい華やかさだ。
そして急転直下のラスト。幼い梓と景がいじらしく育んだ――と見せかけてきた絆が暗転する。
梓がしたのは非道なことだろう。しかし、むしろその人としての弱さ、暗さが私の好みであったりする。過去を思い出した梓がどうするのか、『夢魔』に連れ去られた景がどうなるのか、やたらと続きが気になる終わり方だった。