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写本師の穴蔵

本の感想などを書き溜めています。

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「おさがしの本は」門井慶喜






図書館のレファレンス・カウンターで働く主人公が、本絡みの謎解きをする連作短編集。
ちなみに、この本は図書館で借りて読んだ。
書店員が謎を解いたり古本屋が謎を解いたりするミステリーもあるが、それらとは違った切り口でまた面白い。
最大の違いは、民間企業ではなく公共施設、といった点だろうか。
本をめぐるミステリーよりも、図書館の在り方について重点が置かれている。
文章も言い回しが固いというか、古めかしいというか…お役所的、という意味ではよく合っているのかも。

一応探偵役の和久山だが、超人的な推理力などはない。
出した答えが間違っていたり、あっさり他人に解答を出されたり、あくまで一般人なのだ。
ただの一般人が、あくまで地道に仕事を片付ける姿が好ましく感じられる。


「クリムゾンの迷宮」貴志祐介






火星の迷宮、と称される見知らぬ土地で開始された命がけのサバイバルゲーム。
藤木は生き残ることができるのか…

1999年に書かれた作品だが、設定の特殊さもあって古さを感じさせない。
たぶん、今から十年後に読んでもそうだと思う。

とにかく物語に引き込む力がすごい。
全体を通して与えられる情報量は結構多いのだが、ゲームブック形式をうまく利用し、どんどん読み進めることができる。
ゲームのからくりが判明してきた後半には、もうページをめくる手が止まらなかった。
ラストの余韻も印象的。


「私たちが星座を盗んだ理由」北山猛邦





なんとも言えない後味が残る短編集。
裏表紙には「すべてはラストで覆る!」と煽っているが、そこまで驚天動地のどんでん返しがあるわけではない。
どちらかと言うと、カバー袖の「主人公たちの物語は余白に続く」という著者の言葉がしっくりくる。

以下、ネタバレを含む各編の感想。

「メイン・ディッシュ」北森鴻





北森鴻作品の特徴の一つに、料理の描写がやたら美味しそうだ、というものがある。
この作品は、思わず唾を飲み込むような料理の描写で満載の連作短編集だ。
料理の種類も幅広い。
素材が謎だが絶品の天麩羅、市販のルーとは思えないカレー、さらにはラーメン、ビール、チャーハン、梅酒などなど…それぞれが素材や作り方が丁寧(かといってくどくもない)に描かれ、食べた時の見た目や匂い、熱さ冷たさによって裏付けされた味の描写が脳内にしみいるようだ。
まさに自分の口に料理を入れてもらったような気分になる。

小説全体の構成も素晴らしい。
複数のストーリーが最後に収束し、大きなストーリーになる…というのはもう珍しい構成ではないが、この作品ではより複雑な構成になっている。
ひとつひとつの良質な短編が、章タイトルに表わされるようにひとつのコース料理となって、より美味しく味わうことができる。

ミステリとしては多少アンフェアかな、と思わせる部分もあるが、非常に楽しめた。



「弁護側の証人」小泉喜美子





ミステリーには似つかわしくない優美な文章を楽しんでいるうちに、あっさり騙されてしまった。
前情報を知らずに読んだのも良かったのだろう。
販売時には大げさに煽る帯がついていたらしく、身構えて読んだ人は拍子抜けしたらしい。
一見はかなく見えるミミイの、したたかとも言える強さが印象的だった。



「インディゴの夜」加藤実秋




本業はライター、副業はホストクラブの女性オーナーである高原晶が事件を解決する、連作ミステリー。

表題作は構成も練りこまれ、犯人の繊細な動機がほろ苦い余韻を残す、いい作品である。

ただ、それ以降の三作は若干毛色が変わり、少年(ではないが)探偵団の冒険活劇、といった印象を受けた。
姉御肌の主人公と、謎めいた敏腕マネージャー、そこそこ個性のある犬っぽいホスト達がそれぞれ役割を果たし、事件を解決する。
登場人物は多少ひねくれていても実はいい奴で、黒幕は絵にかいたような悪役だ。
最後は大立ち回りを演じて悪役は逮捕され、被害を受けた女性や子供は前向きに立ち直る。

要は、働く大人の女性向けのドリーム小説なのだ。
仕事のストレス発散には、こういう軽快で楽しいエンターテイメントが一番向いているのだろう。


「密室から黒猫を取り出す方法」北山猛邦





ひきこもりがちで気弱な探偵、音野順シリーズ二作目。


「密室から黒猫を取り出す方法」
完全犯罪を目論み、密室を作りだしたが、部屋の中に黒猫がはいってしまい…。
猫一匹にふりまわされる犯人が滑稽。

「人喰いテレビ」
ペンションで起こった殺人事件。目撃者によると、被害者はテレビに喰われてしまったという。
UFO研という、かなりアクの強い団体が登場。
ラストシーンに笑い転げた。

「音楽は凶器じゃない」
六年前に高校の音楽室で起こった強盗事件を探る。
このトリックってそこまで上手くいくのかな?証拠がいろいろと残りそうに感じるし、警察が徹底的に洗えば露見しそうな気がする。

「停電から夜明けまで」
ある兄弟が、遺産相続のために血のつながらない父を殺害しようとする。
"見えているからこそ、見えるはずのものが見えない"というトリックが鮮やかで好み。

「クローズド・キャンドル」
おびただしい蝋燭がある部屋で自殺した男。名探偵を名乗る琴宮が、殺人事件であると主張する。
音野と正反対の性格である琴宮が面白い。また再登場しそう。





「踊るジョーカー」北山猛邦





気弱でひきこもりがちな探偵、音野順が、友人の推理作家白瀬白夜に引っ張られ、事件を解決する短編集。
軽快なテンポとコミカルな展開で、でもトリックは本格という面白い作品。

登場人物もあくが強めで、岩飛、笛有(ふえあり)、高庭といったペンギンのような名前の刑事たちが出てくる。
そういえば「しらせ」は南極観測船だった。


「踊るジョーカー」
無数のトランプが散らばった部屋で起きた密室殺人。
手品のようなトリックが面白い。

「時間泥棒」
屋敷中の時計が少しずつ盗まれる事件。盗んだ理由がシンプルで展開もまとまりがよく、好きな作品。

「見えないダイイング・メッセージ」
殺された社長の金庫の解錠番号を、被害者が死に際に撮ったポラロイド写真を手掛かりに推理する。
ダイイング・メッセージはともすれば不自然になりがちだが、この作品ではメッセージを残した理由を明確に書いている。

「毒入りバレンタイン・チョコ」
女子大生が毒入りチョコを口にしてしまう。
正直かなり危ういトリックではないだろうか。危うさの理由も一応動機にかかわってはいるが…

「ゆきだるまが殺しにやってくる」
大富豪の娘と結婚する条件は、もっとも優れたゆきだるまを作ること。
ゆきだるま作り競争中に、参加者の一人が殺される。
光景を想像すると笑いが込み上げてきた。
作中に乱舞する「ゆきだるま」の文字が、そのシュールさに拍車をかける。
タイトルも含め、この本の中では一番ツボな短編。



「レディ・ガンナーと宝石泥棒」茅田砂胡




祝典参加のためローム王国に出向いたキャサリンは、駆け落ち騒動と宝石盗難事件に巻き込まれる。

ミュリエルとアンジェラが活躍し、四人組の影が薄い。
特にケイティはリーダー格なのに、いまいちパッとした活躍がない印象である。

ダムーはキャサリンといい感じになりそうだったり、ミュリエルに好かれたりなど、恋愛面が結構推されてる。
アクション面でも活躍が多い。
ベラフォードは見た目が派手でキャラも濃く、騒動の発端になったりする。
ヴィンセントはエピソード中、一回は変身する。それ以外は目立たないが、とにかく変身することで状況が変わる切り札的存在だ。

ケイティがキャサリンの姉貴分みたいな存在になればよかったんだろうが、アンジェラとベラがその役を担っているので、いまさら…という感じである。

ところで、この表紙の絵が非常に好みだ。
角川文庫で復刊された第一作目は、表紙が変わってしまって非常に残念。


「レディ・ガンナーの大追跡」茅田砂胡





前作の冒険を描いた絵が一因で、ベラフォードが狙われることになってしまう。
責任を感じたキャサリンは、再び旅に出ることに。

異種人類が存在する社会、という世界観に焦点を当てた話。
前作よりも少々どぎつい描写もある。

ところで、キャサリンは出会った異種人類をやたら虜にしている気がする。
「キャサリンを悪く言う存在、すなわち悪!」とでも言わんばかりだ。
まあ、こういった小説では主人公無双しているほうが気持ちよく読めるので、それも良いのか。

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管理者:dusk

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